#エスタシオン事務所
「…この恐怖、逃げられないネ。メアリー・フィルアルムである以上、定めとしか言えないヨ。」
■メアリー・フィルアルム:西瀬あかり
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産まれた時には、もう既に人生は決まっていた。
メアリー・フィルアルム。ヨーロッパの端にある小さな島は、代々フィルアルム王国一族が納めていた。世襲制のその国は、必ず女が王として君臨せねばならないという決まりになっていた。
メアリーはその国の第一継承者だ。彼女が産まれた時にはもう、彼女は既に女王になることが決まっていた。度重なる厳しい英才教育。疲弊していく精神の中で、それでも彼女が女王となるために弱音を吐かなかったのは自らを慕ってくれる妹の存在がいたからだった。自分のことを支えるために自らも頑張るのだと意気込む妹の為に、幼い彼女は女王となろうと様々なことを耐えてきた。
──けれど、彼女はその責務を全て放り投げた。国から逃げ出したのだ。遠く離れた日本にまでやってきたのは、彼女が隠れて好んでいたアイドルたちが日本にいたからだ。どこか助けを求めるような感情を抱え彼女は日本まで逃げた。国も、地位も、全てを捨てて。
──メアリーは女王候補だ。けれど、それは彼女が望んだことではない。出来るならやめたいと、棄てたいとすら思う。だって、──あんなに愛した妹に、女王の座を奪われるために殺されかけたのだから。
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