特殊部隊:零
作者:不明
特殊部隊:零
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ーー第二話ーー
【姫黒】の朝は忙しい。
早朝、猫2匹に催促され餌の準備。猫の世話を終えたら次は自分の分の朝ごはんを用意。軽めの朝食を牛乳で流し込み、次に歯磨きと洗顔。洗濯機を回し少し空いた時間に服を着てしまう。長い黒髪を高い位置で結び、洗濯物を干す。今日はよく晴れたいい天気だった。洗濯物を干したら次にメイクの時間だ。
パパっとメイクを済まし、全身が見える縦長の鏡で最後のチェックをする。
少し黒いネクタイが曲がっていたので綺麗になるようにやり直す。
猫がにゃ〜んと鳴いた。
「…よしっ」
鏡に映る自分に向かって自信をつけるように笑う。
「兄貴…今日もどうか見守っていて……」
辛そうに零す言葉はどこか縋るように聞こえた。
猫がにゃ〜んと鳴いた。
兄は素晴らしい人だった。警察官として一般市民を助け続けパラドクスの暴走事件で最期を迎えた。
パラドクスは人間の命を奪う。奪うという行為に罪悪感すら感じずもっと人間を殺す。パラドクスは日に日に増えていく。勢いが留まることを知らなかった。
兄は欲望のために姿形を変え人間の命を奪う異形から人間を守った。
なんと愚かで滑稽か。
兄貴として尊敬はしていた。難しいと言われる試験に合格し、夢だった警察官として一般市民を守り死んだ。兄貴の死後、地球政府から感謝状が贈られた。だからなんだという。命を落とした兄貴は帰ってこない。
人間を守る?その守った人間がパラドクスに寝返るとも知らずに?
兄貴はパラドクス…命を懸けて守った元人間に殺された。
愚かな兄、そして愚かなパラドクス。
姫黒は鼻で笑い玄関を出た。
「いってきます」
猫がにゃ〜んと鳴いた。
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