メーデーメーデー
CHiCO with HoneyWorks
メーデーメーデー
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様々な人種が居るが全員ガッチリとして屈強な男性ばかり。その中、小さく震える小さな小さなホビットの女の子…わ、私凄く場違いだ!何度も呟いた。ニフ先輩、色んな人と仕事してるけど…こんな状況でも理事会を背負ってるんだ…理事会の責任の重さと、いつも頼りないニフの労を痛感した。
「署名ありがとうございます。早速、駆除隊を出撃させました。先に情報班を派遣して、ある程度の戦力と状況は把握していますが、まだ分からない事も多く…更に許可を要請する場合があるかもしれません……大丈夫ですか?」
シノはまだ候補生で、あくまで代理として居る事を知っている兵長は申し訳ない気持ちになった。
「学生のシノさんにこんなに重い仕事をさせてしまい、誠に申し訳ないです。一応ニフさんにも伝達を送ってあります。辛ければ、別室で休んでも構いませんから…」
気遣いが痛かった。善意が伝われば伝わる程、己の小ささが分かってしまう。…あぁいつもの時間だったら、書類をまとめ終わって、ゆっくり窓口の相談を聞いて…ニフ先輩が微笑んで見つめててくれてるのに…ここに居たらな…
「頭では一人一人色々な相談を抱えているんだなって分かっていても、ここに座ると思い知らされます。同じ相談でも人が違えば、成り立ちや理由が変わる…シノちゃんはそれを教えなくても知っていました。理事会員だって、たまに相談を表面だけしか聞いてない人もいます…シノちゃんは理事会員に向いてると思います!私が保証します」
いつかのニフの言葉が頭を過ぎった。ダメだ、頑張らなければ…!奮い立たせた矢先、副兵長と情報班長の会話が聞こえてきた。
「それにしても、霊地でも瘴気の溜まり場でもないエリアに、何故急に群がったんだろうな?」
はっ!としてシノは立ち上がった。理事会員としての勘だろうか、群がったのには何か理由があると強く感じたのだ。兵長にエリアの詳しい座標を聞き、地図に手をかざして詠唱した。
「万物の書の所有者、トートは語る。開け、真理よ。たとえ其は目に見えずとも…」
掌と額に光が灯る。シノは静かに目を閉じる。オークに気配がバレぬ様、慎重に千里眼の魔法を強めていく…シノの視野は段々と群れの中央へと伸びた。そこには毒矢の罠にかかり苦しむ子オークと、咆哮を上げ続けるオークがいた。その声にオークが集まったようだが、そもそも好戦的な魔族。治療は疎く、どうして良いか分からずに右往左往している。苛立つ空気に当てられ更に集まったオーク達は興奮し出し、今にも周囲を襲いかねない。1部はキリエへと歩を進め出している…
目を開いたシノは大声で周囲に告げた。
「オークを襲ってはいけません!危険なのは1部興奮した群れだけです。彼らは助けを求めています。危険がなければ足留めをして下さい!」
全兵がシノへと視線を向けた。兵長がシノに駆け寄り、詳しく話を聞く。
「罠に子供がかかってしまい毒で苦しんでいます。助ければ群れを解散させられるかも!」
兵長は即座に指示を飛ばす。副兵長は妨害工作を得意とする兵を集め、急いで飛竜に乗せて送り出した。班長は飛空の魔法を詠唱して飛び立った。一気に動き出す室内、シノも詠唱を続け、今度は毒の情報を集めだした。
「…うん、あまり強い毒ではなさそうです。オークなので抵抗力もあって即死に至らなかったようです。適切な処置で十分治るかと思います」
「ならば駆除隊に同行させた衛生兵でも対応できそうだ…ありがとうございます、シノさん!理事会代理として居てもらえれば等と失礼な事を申し上げた無礼、どうかお許しください!」
ビシッと敬礼で謝られ、その気迫にまたアワアワとしだすシノ。しかし、状況が一気に進んでよかった…ニフ先輩だったらほっとして泣き出してるかも…その姿が目に浮かんで吹き出してしまったシノの頬にも、涙が伝った。
全てが終わる頃には深夜を回っていた。残念ながら、キリエへ進んだ1部のオークは暴徒と化してしまい戦わざるを得なかったが、キリエのカミツキ達が一気に妨害魔法を詠唱し、無力化してから子オークの治療に当たった。仲間を守ろうと暴れたオークに数名の兵は傷付いたが、治療が終わり、元気を取り戻した姿を見た群れは、次第に冷静さを取り戻した。落ち着いた者から少しずつ魔法を解いてゆき、見事群れの解散を達成した。
翌日、夜遅くまでの勤務のせいで抜けない眠気と戦いながら出張所へ向かおうとドアを開けると、そこには大量のお土産をかかえ、シノを見るやいなや泣き出すニフの姿があった。
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被害を最小限に留めました。
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