陽光と黄色の箱
ナブナ feat.pazi
陽光と黄色の箱
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ついにニフも実力行使に出たようだ…放ったらかしの園芸店を園長と力を合わせて開店までこぎつけた。開店許可を得る為に書類を集め、ニフの出張所に提出しようと訪れた矢先箱を渡された。
「開店おめでとうございます!園長から話を伺って、ある程度進めておきましたので後はお任せ下さい!そこでですね…お願いなのですが…」
予定外の土産が出来た。綺麗で素敵なのだが、これから忙しくなるというのにプラスしてこの箱の届け先まで探さねばならないなんて。はぁ…人が行き交う大通りに小さくフィーのため息が散った。項垂れながら道を飛んでゆく。すると、人通りの多さで普段気づかなかったが、道に蓙をひろげ自作の絵を広げて売っている人が見えた。…そう言えば、まだまだ商品が少なくて店の中もなんだか味気ない。絵を飾ったら素敵だろうな…フィーは人波を脱いながら露店へと向かった。
…全く客が居ることに気づいていない露店の店主。真剣に絵を描いている。フィーは声を掛けようとしたが、彼の描きあげる世界にはっと息を呑んだ。様々なモチーフとシンボルが複雑に絡みあい、独特の世界を放っている。まるで…
「満開の桜の花を遠くから見てるみたい…」
カタン!びっくりした店主は鉛筆を落とした。初めてフィーと顔を合わせる。30代ぐらいだろうか?狐目が特徴的な人間。慌てたように正座をし、いらっしゃいませ!と頭を下げた。
「あああ!いや、あの、私も勝手に覗き込んでしまって!声も掛けずにすいません」
「いいい、いや!気にしないで!む、むしろ是非見ていってください。私の絵を見て足を止めてくれた人は何時ぶりだろう…!」
店主は嬉しそうに声を上げて、ガサガサと自分の作品のストックを取り出し、フィーに見せた。どれも様々なモチーフが書かれている事に変わりがないのだが、1枚1枚にちゃんと描きたいテーマを感じる。ずっと見ていたいと思わせる絵。フィーは感動を店主に伝えようとしたが、先に店主が口を開く。
「好きなもの、感じたものを素直に描いてきたのですが…理解されないんですよね。1人見えている世界が違うのかもしれません。ほら、私の隣に来て見てみてください」
フィーは言われた通り店主の隣に座ると、不思議な光景が広がった。…誰もが進む方向しか見ていない。淡々と流れる川のように無機質に進む人々。この露店だけが世界から切り離され、誰からも見えない孤島のようだ。…あ…フィーは声を上げた。自分だって、何度も通っているこの道に露店がある事を気づけなかった。
「面白いでしょ?孤独じゃないのに孤独で。透明人間みたいな感覚。私も、私の絵も。開かれた個室で沢山居るはずの空間にたった1人。自分だけが感じたものを描く…そりゃ、見て貰えないのも当然ですね」
そう言って、くすくす笑いながらまた絵を描き始めた。鉛筆が線を描く音と共に、チラチラと持っていた箱が光出した。
目を開くと、何も無い世界に1人漂っていた。相変わらず線を描く音だけは聞こえてくる。すると、足元から光を放つ線が現れた。音がする度現れる光はいつしか世界いっぱいに彼の絵を描いていた。光は暖かく、春の陽光の中に居るようだった。線はいつしか宙に浮き、漂うフィーと踊り始める…なんて孤独で奇妙で…楽しいのだろう…
「お客さん!お客さん!!あ!あぁ、良かった。風にあてられましたか?急に気を失うから」
既に露店は片付けられ、ベンチに布をひいて寝かされていた。すいません、もう大丈夫ですと言うと、店主はほっとして荷物を抱えた。
「今日でこの街を出て、また旅に出るつもりだったんです。最後に私の絵を見て話をしてくれる人と出会えて良かった。私が最も欲していて、なかなか出会えないものだから…これ、貴女と一緒にいた楽しさを絵にしました。思い出に持っていてくれたら嬉しいです」
そう言って彼は人波に紛れていってしまった。お礼も出来なかった…もっと話したかったな…そう思いながら絵を抱え、箱を探すが…荷物に紛れたのだろうか?どこを探しても見当たらなかった。
次の日、貴方は出張所の前を通りかかると、ドアの小窓からむむむと面白い顔で、黄色の模様がついた紅色のリボンが結ばれている、紫色の縁つきの虹色と水色の箱と睨めっこするニフを見かけて、声をかける。
「フィーさんに渡した箱が何故かまた戻って来てしまって…届け先を見つけるの手伝ってくれません?」
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謎の箱を預かってください。
尚、このクエストのアンサーソングはそのまま次のクエストソングになります。
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