真に強いのは…
Foorin 米津玄師
真に強いのは…
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「見た所下級兵ね?鎧で分かるわ!こんな下っ端に用なんてない!責任者呼びなさいよ!」
…まるで怒り狂うモンスターそのものだな…みりんはふむ…とため息をついた。こういったシーンは初めてではない。軍事というのは時に恨みや怒りを買うこともある。正義のために、その人の為にと頑張ったことが、自分の独善だった事もあれば、その人の解釈で全く違う受け取られ方をする。まだ新人としてがむしゃらに仕事をしていた時、そんな声をまともに受けて激昂した覚えがある…
夏の暑い日、正直好きではない同期との任務。暑さに加えてヘラヘラと全く真面目に仕事をしない同期が目につき、みりんの苛立ちはとてつもないものだった。アヴァロンの住民が街の外の森のエリアで女性が行方不明になったので、早急に救出せよとの事だったのだが、同僚ははしゃぎながら森を進んでなかなか早く進まない。一体なんなんだコイツは…。
行方不明者を発見した時には森のゴブリンに襲われていた。みりんは焦って声を張り上げた。
「絶対零度の刃よ、貫け!リヴァイアサン!」
咄嗟の判断で力んでしまった。まして自分の魔法の強さをまだ上手く制御出来ていなかったのでゴブリンをズタズタにした上に、彼女にも被害が及ぶ威力だった。同僚は顔色ひとつ変えず、素早い動きで女性を抱き上げると、魔法で宙へと舞い上がった。
「いんやー、流石!噂の同僚。俺こんなに強い魔法は撃てないや」
ケラケラ笑う。女性は混乱し怒りをぶつけた。
「降ろしなさいよ!!なんなの!?軍は人もモンスターも一緒に殺すって言うわけ!?この人殺し!軍のフリした殺し屋!」
「な、な…なんだと!?我々は貴女が行方不明だと要請を受けて助けに来たのだぞ!?その言い草はなんだ!」
力は強かったが、彼女を助けたい一心なのは確かだった。同僚にイラついたのも、彼女の無事を早く確認したかった為であるのに…
「…まぁまぁ、落ち着きなさいな御二方」
同僚はゆっくりと降り彼女を優しく座らせた。
「彼女も不安だったんだ。襲われたかと思った矢先に、そいつが見るも無惨な姿になったら…怖いだろ?俺らみたいに惨劇に慣れてないんだ。大丈夫、もう家に帰れるから。ゆーっくり深呼吸して、お茶でも飲みな?」
同僚が道すがらはしゃいでると思ったが、彼は水を汲んだり、薬草を採取したり、道標をつけて歩いていた。同僚は手際良く火を起こして、薬草を煎じてお茶を作る。その間、聞いていて落ち着く声で諭した。
「でもな、俺の同僚の気持ちも分かって欲しいな。あいつずっと不安そうにソワソワしてたんだ。目の前でお姉さんが襲われてるの見て…あいつ、普段は凄く冷静な奴なんだよ。あんな取り乱さないんだ。…な、察してくれ…」
穏やかにお茶を差し出す。女性は泣き崩れて、心から謝罪を口にした。
「………ねぇ!ちょっと!貴女!!ねぇ!人の話聞いてるの!?ほんっっっと、田舎の軍は躾すらなってないのね!」
…おっと、いけない。過去に思いを馳せていたら、このご婦人のことを忘れていた。涼しい顔でみりんが口を開くと
「私達の先生をいじめないで!!」
どこからか入ってきた剣術の生徒達がみりんと夫人の前に立ちはだかってみりんを庇った。
「確かに主要都市に比べれば華はないです。しかし、ここ程魅力的で温かな街を私は知りません。そう、私みりんが断言します」
みりんですって…?あの大都市アヴァロンの軍師が!??夫人は顔を青くして、そそくさと街を出ていった。
…そう言えば、アイツ最近仕事を変えたって連絡があったな…
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クレーマーを撃退しました。
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