【声劇台本】「漱石の猫」二頁
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【声劇台本】「漱石の猫」二頁
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1つ前の続き。
Part1→ https://nana-music.com/sounds/05469d16
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でもあの人は、
そんなに僕に構わなかった。
僕のことが特別すきというわけでも
ないみたいだった。
だから、僕も好き勝手にした。
難しい紙を読んでいる
あの人のせなかに乗ったり、
ふかふかの布団に潜ったり、
不思議なことなのだが
あの人を訪ねてくる人間は
彼のことを「せんせい」とか「なつめ」とか
とかくにあいつは
たくさんの名前をもっていた。
僕のことをネコ、ネコと呼びながら。
そうしてたくさんの人間が
僕をネコと呼び、僕を撫でて
僕がこの縁側から何回も
「あづいなぁ。」と言った時
涼しい季節がやってきた。
僕の毛皮もふさふさになった。
もうあつい思いをしなくて
すむんだなあと思ったら
とっても眠くなってきた。
九月の十三日だった。僕はしんでいた。
いよいよ僕は最後まで ただの "ネコ" だった。
あの人は最後まで僕に名前をつけなかった。
…でも、とても愉快な日々だった。
「あの人」はどうだろうか。
「吾輩は猫である。名前はまだ…にやい。」
おしまい。
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