【第1話】大洋の息吹(第4節)ゲームスタート
OCEAN TRAVELERS
【第1話】大洋の息吹(第4節)ゲームスタート
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【第1話】大洋の息吹
(第4節)ゲームスタート
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(;´༎ຶٹ༎ຶ`)とアカツキの嘆きを耳にした所で、我らクマノミはようやく落ち着きを取り戻した。神……神が……アァ……と未だ若干心ここに在らずのナルをステラと宥めながらも、視線は宙に浮かぶ4人の神を捉えて離さない。
何故だろう、心の奥底が燃え滾る様に熱く感じるのは。ここにいる全員を食い倒して、あの神々でさえも手をかけ、このシャントラとかいう組織の頂点に立ちたいという思いが、ふつふつと湧いてくる。
「君達には、楽しい楽しいゲームをしてもらう。」
ニヤリと笑う夢の声の主に倣い、彼の横に立ち並ぶ3人の神達も口元を怪しく歪ませる。その4つの笑みに、この場にいる全員が背筋を凍らせた事だろう。しかしまた同時にゾクゾクと、心身が震え出す程の戦闘欲が……味方でさえもこの手にかけたくなる程の昂りが、身に覚えのないその感覚が、心の奥底から込み上がってくる。
「せや、自己紹介がまだだったな。」
俺はキノ、神だ。と手短に答える。
「私のキノ君じゃけ、手ェ出したら許さんから。」
「サキ、それはお互い様な。」
隣で可愛げに怒る少女をぐいと寄せるキノ。
口にせずとも分かる。彼らがポセイドン・アムピトリテと呼ばれる西から訪れたと噂の神々であろう。
「んで俺はレタ!こっちはみつるん、タメでいいゾ〜仲良くしてな〜」「ミツだよー、よろしくね。」
れったん💢と怒りの鉄槌を食らわせながら、あだ名によるテキトー紹介を披露した相方を一喝。
一見巫山戯た様に見えるその2人もやはり、オケアノス・テティスと呼ばれる東方の神々であろうその力の波動が感じられる。
「神……神…………ヒィ……」「なるちゃ、息して。」
歓喜のあまり意識を手放す寸前のナルをトントンと宥めること致し方無し。
「さて、何故君達をここに呼んだのか。話を戻そうか。」
まずはおめでとう、能力者達。と切り出すキノ。
「そんな君達へ、先日囁かなプレゼントをさせてもらったんだが……」
「海の記憶……」隣でステラがはたと呟く。ご名答、と神。
「俺の声を聞く事の出来た君達こそ、」「あの……」
「素質のある、選ばれし者達……シャントラの一員ということさ。」「あのぉ……」
「そんな訳で、君達の記憶をいじったのには理由があって」
「す、すみません……」
淡々と語るキノに届かぬ、蚊の鳴くような声がサメチームから聞こえてくる。見やると両目を黒布で塞いだちょっと待ってアレ見えてるの?うちのすてちゃも目があいてるのかあいてないのか分からんキャラしてるけど、そんなレベルちゃうやろ?あれ。塞いじゃってるよ完全に。見えてないでしょなんなの?心眼なの?
絶えない心のツッコミを他所に、パンチの効いた桃色の髪を揺らしながらその女性……ジャキがボソボソと何か言いたげにしている。見かねたリンがため息混じりに彼女の目を覆っている黒布に手をかけ、勢いよくそれを引き剥がした。
……途端、
「あのぉーーッッッッ!!!!!うんちしたいんで早くしてーッッッッッッッ!!!!!」
それはそれはよく響く声で……キィーーンと残響音を撒き散らしながら、人が変わったようなジャキのテンションに、
「わかるぅ〜!!!」「連れウンチか〜?」
「最大8人同時プレイ!!今、熱い戦いが待っている……『TUREUNCHI』」
臆さずノっていく神達。キノさんに至っては理解が追いつかない。
「汚い。」「いでっ!!!なんで俺だけ!?」
非情な程のミツの蹴りがレタを貫く。てかキノさんそんなキャラだったの意外すぎて大変草。草超えて森。説明を放棄して連れウンチムードまっしぐらな神対応に、最早ツッコミすら仕事をしない。
神のみあらず、同チームのリンですら「りんちゃのがトイレ先やから。」と訳の分からん独り言を投げている。
「……それで私ら、なんでここに呼び出されたんです?」
流石すてちゃ。こみ上がる笑いを隠しきれていないがこの場で1番正当な返しをしてくれた!流石すてちゃ。ホントにすてちゃ。
「あー、私が呼んだんじゃ。みんなにゲームしてもらいたくての」
うんちコールもそこそこに、軽いノリでサキが返す。
「要は慣れだろ。説明ダルくなってきたし、とりあえず飛ばせば?」え、何そこのれったんとやら。とりあえず#とは
「そだね。」「いいと思う。」「いいね。」
おい神達!?じゃあ、飛ばすねーって両手こっち向けないでサキさん!?!
「とりあえず、あれだ。」ぼう、と光り出す景色の向こうで
「楽しんでくれよ。この地で、」キノがニヤリと笑い、
「最高の」スッと消える足元。白一色と化した画面の向こうで。
「デスゲームを。」
私達は、神の声を聞いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
意識はすぐに戻った。辺りを見渡すと先程の崩壊しきったイケブクロとは全く異なる景色が広がっていた。押し返される程の人混み、立ち並ぶアニメ系統のグッズショップ、ゲームセンター、そして車の規制がされた広い道路……歩行者天国というやつだろうか。
「ここは……アキバだね。」
正常化したナルがキラキラと目を輝かせながら呟く。その瞳は、
「なるちゃ、目が」「え?」「やよちゃこそ。」
そして私の瞳も。
「オッドアイになってる…。」
皆一様に、左の瞳に山吹色の光を帯びていた。
「てかすてちゃ見えないよー」「見して見して」「んえー?」
はい、と珍しく瞼の上がったステラの目もやはり、左側が山吹色に染っている。
「ますますオソロじゃん?うちら。」
「可愛過ぎ……とりあえずタピオカ飲まない?」
「え!いいね!タピろタピろ!!」
デスゲームの一件はさておき、消えた他チームの行方も気にかけず、現状置かれたこの場を目いっぱい楽しむ。それが私達のやり方。
あぁ、でも。
黒い感情が過る。それは少しずつ芽生える本能。
奪え、喰らい合え、その手を染め上げ、頂きを目指せと。
そんな日が来るのだろうか。出来れば、来ないで欲しいな……なんて。
「やよちゃ!やーよーちゃ!何頼むの?」
結局スタバへと足を運んだレジ前で。物思いにふけっていた私を、ナルが黄色い声で呼んだ。その手には既に注文済みのドリンクが握られている。…………タピオカではなさそうだ。
「あ、ごめんごめん。なるちゃ何頼んだの?」
「ベンティショットヘーゼルナッツシロップバニラシロップキャラメルシロップキャラメルソースアドシロップチョコレートホワイトモカシロップチョコレートソースシンプルシロップチョコレートチップフラペチーノヨウコーヒーパンナコッタタゾチャイシロップノンファットミルクエクストラホイップライトシロップライトアイスエクストラチップエクストラソースコーヒーフラペチーノ」
「あーそういう事ね、完全に理解した。」
「やよちゃ、わかってないやつ。」
分からなかった。
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