【第1話】大洋の息吹(第1節)夢幻なる声
OCEAN TRAVELERS
【第1話】大洋の息吹(第1節)夢幻なる声
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【第1話】大洋の息吹
(第1節)夢幻なる声
夢を見た。
美しく青々と煌めく母なる海洋。その底に広がる珊瑚礁の中で仲間達と愉快に戯れる私は、クマノミの姿をしていた。仲間は沢山いたが、同じ珊瑚で寝食を共にする者は2匹。いずれも息の合う者同士で一緒にいてとても心地がいい。今日も今日とて面白おかしく一日を潰していく……あそこの珊瑚は綺麗だの、頭上を横切るサメの顔が変だの、クラゲ達に教えて貰った餌場が最高だの、そんな穏やかな日々。
グラリ、と。歪む視界、暗転する感覚、雄大な風景が一瞬の内に消え去り、突如として右も左も分からぬ暗闇へと放り出された。ここは一体と辺りを見渡すも黒、黒、黒。1色に塗り固められたその世界は、何色にも染まらぬ絶対的な力を感じる。
━━━集え、旅人達よ。
耳ではない。心に、声が響いた。
━━━海洋の旅人達よ。選ばれし君達を祝福する。
選ばれし?祝福?何のことだろう。
━━━集え、争え、奪い合え。そして王の座に……
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ガバリと布団を跳ね除け飛び起きた。その拍子に傾斜のある低い屋根に頭部を強打したのは言うまでもない。くちおしや……めちゃ痛い……。
ピロン、と携帯の通知音が鳴る。時計を見やると午前10時、少し寝過ぎたようだ。通知を確認すると友人であるステラからLINEが来ていた。
『おはよう☀あのさ、ちょっといいかな。』
『なんか変な夢見てさ……。』どきり、と心臓が跳ねる。
「え、そうなの?実は私も…」と寝覚めが悪い旨も伝えながら。
『気晴らしに今日遊ぼうよ!( ˙꒳˙ )』とお誘いを貰う。
断るわけが無い。場所と時間を手早く決めて、もう1人の友人ヤヨにもLINEをいれておく。
身支度を済ませて家を出る。急ぎ足で向かう先はイケブクロ。何故だろうか、私もステラも同じ場所に集まろうと口を切った。迷うこと無く、まるで示し合わせたかのように。
「うわっ!!!」
歩きスマホをするなとはよく言ったものだ。真正面から女の人とぶつかってしまった。恥ずかしや……めちゃ痛い……(本日2回目)
「す、すみません…大丈夫ですか?」
「いやいやいやいや!私もよそ見しながら歩いてたから……ってあれ?」
なるちゃん?と私の名を呼ぶ聞き覚えのある声に、本日1番の高鳴りを見せる心臓がドンドコドォーン!!!!
「りんちゃ!?!?」「うわあっ!久しぶり!!」
何を隠そう、彼女はネット上で歌の活動をしている私の!!推し!!!そう!!!LOVE オブザ LOVEの!!!りんちゃ!!!!!!そして、友人でもあるとかもうこれ神。
彼女とは個人で開催したオフ会以来、数ヶ月ぶりに再会した。一緒にワイワイし合える仲でもあるとかこれまさに神。
お互いに経緯を話してこれまた驚き。
「え、なるちゃんイケブクロ行くの?私もでさ。」
逆方向じゃね?と指摘を受けて一緒に行こうとお誘いを受ける。
「あなたが!!!!神ですか!!!!!神ィィィィイイイ!!!!!!!!!!!」
推しと共に向かう目的地。私の心臓は暫く暴れ続けることこの上ないであろう。
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