第二話 『白銀の翼』
BGM:四ノ宮りゐ シリーズ:『夢で逢いましょう』
第二話 『白銀の翼』
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第二話 『白銀の翼』
お相手…ソノラ 様
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寒い。
寒すぎてどうにかなってしまいそうだ。
ブルブルと体を震わせながらも、私はひたすら足を進める。
止まってしまえば、たちまち凍ってしまいそうで怖かったのだ。
当然足取りは重い。
雪に体力はどんどん奪われていく。
目の前が霞んで、このまま眠ってしまいたい衝動に駆られた。
私がそろそろ限界を迎えようとしていた時、背後から高めの声がかかる。
「あらら…ずいぶんと寒そう。」
「ぅううう…そういうあなたは、何故そんな平気そうな顔ができるの…」
「私はこの雪景色と共に生まれたからね。」
「はぁ?」
私の怪訝そうな顔に、声の主は肩を竦めた。
霞む視界の中、私はその人物をよく見ようと目を細めた。
雪に同化する程に白い髪、凍った湖のように透き通る藍色の瞳、背中には何故か銀の翼を携えている。
明らかに作り物でないそれを見るに、彼女は"人"ではない何かなのだと察した。そうであれば、先程の謎の発言にも何となく納得ができるというものだ。
「あなたは、雪を止ませたりできないの?」
「うーん。できないこともないけど…止んでほしいの?」
「なるべく…。じゃないと凍死してしまいそう…。」
「それは大変。なら、止ませて見せましょう。」
白銀の少女は右手の人差し指で天を指し、その指でグルグルと円を描き始めた。
すると、吹雪は瞬く間に止んでしまう。
あまりにも一瞬の出来事に、私は呆然としてしまった。
「はや…」
「うん、こんなもんかな。」
私の呟きを完全にスルーして、彼女は満足げに笑う。
「さて、私の役目はここまで。」
「もう行ってしまうの?」
「うん。そろそろ時間だから。」
私は寂しげな顔を隠そうともせず、白銀の少女を見る。
すると彼女は苦笑して、私に羽根を一枚差し出した。
「これをお守り代わりに持っていて。」
「それ、今、あなたの翼から…?」
「いいからいいから!はい!」
白銀の少女は押し付けるように私に羽根を渡すと、「またね!」と言って雪景色の向こう側へすごい勢いで飛んでいった。
あれだけスピードを出されてしまっては、私ではとても追い付けそうもない。
私はまた一人になってしまった寂しさを噛みしめつつ、存外暖かくなってきた道を歩き出す。
足元の雪もだんだんと溶け始め、緑が見えてきた。
「はぁーーー…寒かったぁ…」
やっと落ち着ける気温になってきた頃、私はそうため息を吐いては、まだ少し湿っている切り株に腰を落ち着けたのだった。
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BGMお借りしました
#四ノ宮りゐオリジナル
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