蒼の軍師 みりん
黒うさP
蒼の軍師 みりん
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キリエの門にただ1人、ニフは立っていた。震えているのは寒さなのか…それとも…
身を切る冷たい風、氷の様な蒼い月がゆらり揺れる細い影を照らしていた。月が逆光となり顔が影でよく見えない。なのに爬虫類特有の刺すように鋭い眼光がギラギラと際立って見えた。
「アヴァロンより遥々…キリエにお越しくださいましてありがとうございます!」
礼で下げた頭が恐怖心でなかなか上がらない。
「構わないよ、ここだろう?門番が居なくなってしまったのは。軍師なぞ椅子に座るばかりでつまらなくてね…あぁ、これから楽しみだ」
澄んでいるのに、威圧感を感じる独特の声。ゆっくりとニフは彼女を見た。
みりん。元々は中央都市アヴァロンの軍師の1人。一時は最強の軍神と讃えられたことすらある実力者だ。ドラコン族の特徴にしっかり当てはまる高身長、滑らかで美しい肌には所々蒼い鱗が輝いている。黒に近い濃紺の髪を高く結い上げた頭には、片方がバックリと折れてしまった角が生えていた。
「そこまで畏まるな。私はこれからお前の指揮下に身を置くのだ。寧ろ、上官なのだから私が頭を下げねばならぬな」
「ややや!やめてください!!私はしがない理事会員の端くれですから!!」
青ざめるニフに、みりんはくすくすと笑った。
「それにしても…なんで、軍師の立場まで捨ててアヴァロンからここの門番になられたのですか?中央都市の方ができる事も多いし、優遇だって良いに…」
おずおずと尋ねるニフを真っ直ぐ見つめて、みりんは笑顔で答えた。
「飽きだよ」
「…へ?」
「お飾りの軍師なぞ、死んだも同然。仕事なんて王族の警護、地方の軍への指示、パレードの参加…私でなくてもできる事だ。後輩の教育だけが心残りだったが、もう教えることもない。あいつらは私の穴を埋めて余る程だ。
それに…キリエには面白い者が多いらしいね。欠員が出たと聞いて真っ先に手を挙げた」
既に書き上げていた住民帳を手渡しながら語るみりんを見て、憧れの栄誉職を投げた彼女の気持ちを必死に理解しようとしたが、凡人には到底理解できそうにない。
「…みりんさん。ドラコン族の亜人、職業は門番と街の護衛、あと傭兵ですね。はい。不備はありません。受け付けました。
憑神はリヴァイアサン。魔法は…え…氷魔法のみ…!」
「それだけ唱えられれば十分。さてさて…キリエは商業が盛んなのだろ?私もこれを機に、なにか始めようかな」
ずんずんと先に進むみりんの後を小走りにニフは追った。
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みりん 亜人(ドラコン) 女性
軍人(門番)
リヴァイアサンのツキカミ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
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