「在るべき」へ
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「在るべき」へ
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Ryuは改めて移転届けを提出しにやってきた。
「…今度はすんなり受けとってくれるんだな」
ニフは静かに目を伏せる。移転手続きをおこないながら、2回目です。と小さく呟いた。
「2回目ですよ…Ryuさんで。数日前に、彼女はこの街を出ていきました。彼女にもRyuさんと同じように引き止めました。…でも…でも、既に貴方の行動と心の有り様を理解してたみたいです。もう止めてどうにかなるものでもなかった…」
ピタリとRyuの動きが止まる。
数日前、涙も枯れた目で、優しく彼女は微笑んで言った。
「全ては自然な形に戻るの。嘘や欺瞞、たとえ善意だったとしても、希望、望みも…不自然なものはこの世では生きていけないように、淘汰されるから。
有り様ではなくて…そもそも、お互いが見えてなかったのかもしれない。歌ってる時だけが幸せだった」
何を知り、何を見てこうなったのだろう。2人の目には、お互いどう見えていたのだろう…それが相手の答え?相手の望み?…そして、彼女は答えに辿り着いた。
「そしてRyuさんも。辿り着いたなら私は止めません」
「ニフ、大丈夫よ。彼は孤独じゃないから…」
Ryuの転移手続きが終わるのを外で男が待っていた。旅の仲間だろう。
そこからもう、最低限の言葉しかRyuもニフも話さなかった。Ryuは出張所の扉を開け、「待たせた」「おう」と会話が聞こえた。
椅子に座ったままニフは見送った。そして、一筋涙を流した。
「ニフ、悲しまないでね。これはそんな…綺麗事ではないから。こんな滑稽な悲劇に酔ってはいけないわ」
1人、数日前の言葉を反芻した。
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新たな地でのご活躍、心より願っています。
「冬支度」お疲れ様でした。
これにて退会を受諾します。
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