翼竜の移動屋 ナギ
ゆず
翼竜の移動屋 ナギ
- 30
- 2
- 0
竜舎の仕事を全て終え、外にある質素な椅子にドカッと座り、赤毛をなびかせ、ふーっ…と暗くなる空を仰いで大きく一息。革の水筒にたっぷり入った世界樹の湧き水をグイッと飲み込んで、っはぁーとまた一息。
重労働だし、汚い仕事もある。けど、やっぱり竜が好き!一緒に飛ぶのはもっと好き!!
汚れた足を見つめて、ニコッと笑う。
ナギ、業者として移動、輸送を請け負う飛竜ギルドで働く一員。しかし、彼女は特殊なのだ。彼女は飛竜ギルド協会初の「人間」の「女性」なのだ。
扱う竜は下級とはいえ、基本的に竜族は気位が高く力も強い。故に代々、ドラコン族(人型の竜の亜人)、そしてごく一部のトカゲの獣人が担ってきた。無論仕事内容からして、女性が耐えられる職場ではなかった。そんな閉鎖的なギルドであったために、職場によっては女人禁制だったり、獣人ですら職につかせないといった所も存在している。
そんな社会に何故彼女は入る事が出来たか…それは、下級のワイバーンではなく、ごく一部のマスターにしか乗りこなせない火竜を見事に乗りこなせたからである…
彼女はキリエの街でもかなり奥地の地区に住んでいた。世界樹の洞窟にも近く、街を外れると手練の冒険者でも危険な場所である。
あるよく晴れた日、母親が家事の合間に少し目を離した途端、幼いナギは姿を消してしまった。危険な区域へ続く道を歩く姿を目撃した住民が止めたそうだが、「呼ばれてるの!早く行かないと!」と凄い力で振り払われたそうだ。
捜索隊を何十人と派遣し、当たりを探したが見つからず朝を迎え、生命すら絶望視され始めたその時、立派な火竜に跨り、無傷で帰ってきたという、今だにその地区では語り草となっているエピソードがある。しかし、当の本人はその時の記憶は残っていないそうだ。
バタン!と竜舎の扉が開くと
「んもぉぉぉぉおー!事務所から、休憩所から、倉庫から竜舎まで…全部探したんですからね!!」
ボサボサの髪の毛に藁が引っ付いたニフがヘロヘロになって出てきた。
「やっほー!ニフ!元気ないじゃん!」
満々の笑みに
「当たり前です!」
叫ぶようにニフは答えた。
ニフから説明を受け、住民帳を書き上げたナギは、ふと思い出したように
「あ、ツノ外すの忘れてた!」
と頭に着けた角飾りを外した。
「…ナギさん、人間の女性。飛竜ギルド勤務と…はい!ありがとうございます。それにしても重そうな飾りですね」
「竜族関係しか働いてない場所だからねー。制服みたいなもんだよ。私には生えてないから仕方ないよね」
「かなり閉鎖的なギルドと聞きますが、働きにくくないですか?」
「虐められたり、陰口叩かれることもあったけどねー。でも、やっぱり竜に関わる仕事が好きなんだ!それに、私から新しい流れができたらワクワクじゃん?」
屈託のないその笑顔に、つられてこちらも笑顔になる。
「竜に愛された少女…ですか。確かに。
憑神は【インドラ】雷と少し水の魔法が使えます。」
気付けにどうぞと分けてもらった湧き水を土産に、ニフは去っていった。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇
ナギ 人間 女性
飛竜ギルド勤務
インドラのツキカミ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
Comment
No Comments Yet.