銀光の酒場主 アキネ
椎名林檎 様
銀光の酒場主 アキネ
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「あぁ、ごめーん。悪いけどまだ開店してないんだ。後で来てくれる?」
店の仕込み作業をする視線を変えずに彼女は答えた。
「あ、違うんです。お客じゃなくて…私です!ニフです」
その声でやっと視線を向けてくれた。
アキネ。生粋のダークエルフ。ノスタルジックな肌色に銀の長い髪と同じ色の目。尖った耳に光るピアスも美しい銀細工のものをいつも付けている。
彼女は最近この街に現れた。この商店街の中で1番の新参者である。この巨大な世界樹に点在する街をある目的のため旅する外来者だった。街から街へ、【あるもの】を追って旅をしているらしい。それがなんであるのか…彼女は一切口を割らない。
その【あるもの】がどうやらキリエの周辺にあるらしいと知り、空き店舗を借りて店を開いた。アキネは旅をする中で知った料理や酒の知識を遺憾無く発揮し、立地が悪い故に長らく借り手のつかなかった店舗は瞬く間に人気の酒場になった。
酒場とは…考えたものである。夜な夜な人々が集まり、酒に気が緩んで様々な情報が流れる。
「なんだぁ久しぶりだね、ニフ。
店がやってる時に来てくれたら色々サービスしたのに」
「いやいや。いいんです!仕事で来たので!!」
ふーん…とアキネは作業の手を止めて、カバンの中を忙しなく掻き回すニフをカウンター越しにゆったり眺めた。程なくして、住民帳と書かれた羊皮紙とガラスペンが出てきた。
「これに記入をお願いします!」
アキネが書き込む間、ニフは店を見渡し呟いた。
「いつ来てもオシャレですね…内装」
「いつも感覚でやってるんだけどねぇ…きっとあちこち歩き回って沢山のものを見てきたからだろうね。でも、キリエにはキリエの独特な美しさがあるよ。自分たちでは気づかないだろうけど…と。はい、お待たせ。」
「あ、ありがとうございます。ダークエルフの亜人、酒場の店主…と。はい、記入漏れありません。ご協力助かりました!
…ふふ、いいお酒を仕込めたんですね。憑神のディオニソスが上機嫌です。水と状態変化の魔法が使えるのですね」
「憑神のおかげで何とか旅もできたから、感謝してるよ。さ、仕事終わりに乾杯しない?」
「いえ、まだ仕事が残ってるので…」
やつれた様子で答えるニフにヤレヤレと溜息をつき
「なら、秋酉麦のお茶でも飲んでいきなよ。酔い覚まし用だけど…」
キンキンに冷えたお茶が疲れてダレた体に染み渡った。
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アキネ ダークエルフの亜人 女性
酒場の店主
ディオニソスのツキカミ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
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