✿五花ノ戦物語✿ 七輪目
一周年記念物語§幻想舞踏会§
✿五花ノ戦物語✿ 七輪目
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✿五花ノ戦物語✿
七輪目・紛れ込んでいた者は…
「その魔法は…黄椿門の者か。」
ボブが立ち上がりさきを見つめる。
「どっかの家長が慌てて走ってたからね。
気になって来てみれば…。
第伍の花が下剋上でもしたのかと思ったらあまりに無様だったから手が出ちゃった。」
「手じゃない、魔法だったぞ~」
空気の読めないツッコミをするハンペンをさきがきつく睨みつける。
ハンペンは慌てて口をつぐんだ。
パチン
扇を閉じる音がする。
見れば風華が扇を閉じ、にこやかな笑顔をむけていた。
「あらあら、今日は本当に来客の多い事。
青の皆さん、落ち着いてくださいまし?
私は別にこの方々を処分するつもりなんてありませんよ。
どうぞ連れ帰ってくださいなボブさん。」
風華が閉じた扇を口元へと近づけ、小さく息を吹きかける。
すると、離れた場所にいるジェイドの縄がこま切れとなり地面へと散らばった。
「…うちの者がご迷惑をおかけしました。
後日家長の会合にて改めて御挨拶させて頂きます。
…ジェイド行くぞ。」
「え、あっ、おい!まて!まだはなりさんの縄が…」
ジェイドが急いではなりの縄を解こうと駆け寄る。
「…お前のツレか?」
「違う!勝手について来たんだ!白家に帰るならはなりさんも連れて行かないと…」
「は?」
ボブが訝しげな顔をする。
「ジェイド、お前何言ってるんだ…?
その人は
[ 白 梅 園 家 じ ゃ な い]だろ。」
「え?」
ジェイドの縄を解く手がピタリと止まる。
「最近白本家入りした新参じゃ…」
「俺は家長だぞ。全員の顔と名前くらい覚えている。」
ジェイドの頬を冷や汗が流れる。
はなりを見ると、彼女の顔は笑っていた。
「あーあ、バレちゃった。」
スクッと立ち上がると、はなりは鼻歌を小さく奏でた。
すると円盤状に回転する水がいくつも現れ、はなりの縄を切り裂いた。
「なっ!?」
突然の攻撃魔法にジェイドは飛びのく。
さきやボブ、プラチナスターの面々も身構えた。
風華がその様子を見てぽつりとつぶやく。
「五家の魔法にはそれぞれ光・闇・炎・雷・風の属性がある…。
そのどれにも属さない、【花の源】と呼ばれる【水】の属性魔法が扱えるのは、
【薔薇の管理者】に属する者。
…隠密の監査では無かったのですか?管理者さん?」
はなりへ確信を持った声で問いかける。
「うーん、弐から肆席の花族は既にもう一人が終わらせてて、
私は第伍席の担当なのですが、どうにも白梅園家は頭がお固くってですねー。
とりあえず新参者って事にして潜り込み、バレるまえに監査を終えて帰ろうと思ったのですが、ジェイドさんに面白半分で付いて来ちゃったのが失敗でしたねー。」
やれやれと肩をすくめる。
「まあでも、面白いもの見れたから良かった!
舞戦以外で花族同士の戦いがおこれば面白い報告が管理長に出来たのになー?」
大きな声でひとり言のようにぼやく。
「…一部の子達がやんちゃしましたが、[何も無かったので]報告出来ませんね。」
風華がニッコリと笑顔を見せる。
「でも…[止める事もしませんでしたよね]?」
はなりと風華の間に異様な空気が流れる。
「…ま、私は第伍席の監査担当です。
第伍席の者は誰も手を出してませんでした。
その報告を持って、私は帰るとしましょう。」
はなりは肩の力を抜くと、一礼して踵を返す。
我に返ったように、ボブ達やさきも動きだそうとした。
「…せっかくの来客です、帰路は私自ら御送りしましょう。」
風華がその言葉を言うや否や、乱気流の様な風が巻き起こる。
風によって地面に舞い落ちていた薄青色の花弁達が大きく舞い上がる。
あまりの強さに全員の視界が奪われる中、風華の声だけが耳元に響いた。
「ではでは他家の皆さん、次は舞戦でお会いしましょう…」
やがて風が収まり、辺りに静けさが戻る。
ボブがうっすらと目を開くと、そこは白梅園家の門前だった。
周囲を見ると、ジェイドとハンペンもいた。
「…こんな遠くへ正確に一人ひとりを飛ばしたのか…」
足元には、桜の花弁が数枚落ちていた。
✿八輪目へつづく✿
#幻想舞踏会一周年
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