花が実結ぶその前に
「コラボ者様」音楽【四ノ宮りゐ様】
花が実結ぶその前に
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国のため、民のため。
私という存在が消費されることに不満はない。
けれど、もしもという言葉がいつも頭を離れなかった。
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四ノ宮りゐ様の素敵な音楽をお借りいたしました。
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窓から外を見やれば、溶け落ちる陽を浴びた小麦が炎の様に揺らめいてる。
舞い散る火の粉の様に仕事終わりの農民達が笑みを浮かべながら歩いていた。
「綺麗ね」
……もし彼らのように生きられたら。
毎日田畑を耕し泥だらけになり、さして美味しくもない食事を皆で囲むのだろう。
日々の生活は決して楽ではなく、明日食うものに頭を悩ませることだってあるだろう。彼らにあるのは小さな田畑と家族だけだ。
それはなんてありふれていて、つまらなくて、苦しくて……どうしようもないくらい幸せなのだろう。
わかっています。
私はこの国の花なのです。
国という大樹に実をつけて、種を蒔くことこそが私の使命。
蒔いた種が根を下ろし、かけがえのないこの土壌を固めることを至上とする。
私はそれを望み、そして望まれている。
……けれど
「今日ぐらいはいいでしょう?」
もう見ることはできないであろうこの景色を、私は噛みしめる様に見つめ続けた。
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嫁入り前の貴族のお嬢さんのお話。
貴族としての役割を認識しながらも一個人としての感情を割り切れない。
そんな彼女が貴族になるまでの儀式。
読み
陽(ひ)
田畑(たはた)
耕(たがや)し
蒔(ま)く
土壌(どじょう)
至上(しじょう)
#四ノ宮りゐオリジナル #声劇 #一人声劇 #モノローグ声劇 #大塩台本
Comment
1commnets
- Kei.お借りしました …私なりの精一杯で、読ませていただきました ありがとうございました