誰かの本心
ねこぼーろ
誰かの本心
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きっと私には魅力が無いのだと、そんな事はとうに分かっていた。
遊女であるのに何故か客が取れない。皆は私を邪険にした。
そんな時妹分が出来た。朱色の長い綺麗な髪、万人受けするような整った顔。大きくて宝石のような青い瞳。
私はその子が大好きだった。
何でも教えてあげた。あの子が泣くのは嫌だから、私は泣くのを我慢した。
大きな仕事が回ってきた。これまで以上に力を入れて、ついに迎えた本番……私は出ることが出来なかった。
あの子があの人取っちゃった。私のお客を取っちゃった。
でも、仕方の無い事だと思った。ろくに客も取れない奴に、こんな大きな仕事が回ってくるとも思わない。
元からあの子に決まっていたんじゃないか。
希望から絶望に突き落として、邪魔者を排除するつもりだったんじゃないか。
今はそんな風に思ってる。
ただ、愛して欲しかった。私だけを愛してくれる人が欲しかった。
暗い部屋で1人、外の空を眺めながら、本を読んでいた。
私の、ただ一つの取り柄は、見たものを全部覚えること。
でも、そんなもの遊女では活用できなかった。
言葉は覚えても、仕草は覚えても、実践するのは難しかった。
部屋に、小さな黒い本があった。
それを開いたら、中から猫が出てきた。
丸い水玉みたいな模様の、黄色と黒の大きい猫。
その猫は喋った。
何が望みだと。
お前は何をして欲しいと。
私は、愛してくれる人が欲しいと願った。
きっと切実な思いだったんだと思う。
猫は、
なら私が愛してやろう。
対価は2つ、お前の感情と、お前の魂だ。
そう言った。
愛してくれるならなんでも良かった。
一時の愛を与えてくれれば充分だと思ってた。
でも、私は気づけなかった。
感情が無ければ、愛など感じられないことを。
私は契約を結んだ。
「………………ただ、愛して欲しかった…」
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