決戦: 事の顛末「希望の呼び声」
企画:ツワモノ達が夢の中(※BGMは ゆきの さんより)
決戦: 事の顛末「希望の呼び声」
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その歌声は、ゆっくりと、まっすぐに、黒く濁った大地の上を進む光の絨毯になった。
溢れた暖かいメロディに呼応して、朽ち果てた薄桃色の花や若草たちが、正気を取り戻す。吠えるようなシャウトに追い立てられて物の怪達は逃げ出し、凄んだ音の唸りが闇を追いやる。
初めて戦神を召喚したあの時、暗雲と突風の中で彼らは必死に支え合い、音を縒り合わせた。
戦神達が見下ろす先で...彼らは今、堂々とその足で大地を踏みしめ、音を編んでいる。
「...光が!!」
パアッと爆ぜた光が、暗雲を真っ二つに引き裂いてこじ開ける。空と地をつなぐ、光の滝。辺り一面に降り注ぐ、日出ずる国の民の声...
「あぁ....まさか、本当に...」
呆然とした様子で空を見上げた戦神達は、その光景に目を疑う他なかった。
光の滝からゆっくりと降りてくる色とりどりの影、それは忘れたくても忘れられなかった、最も愛おしい者たちの姿...
「ちちうえ...ははうえ...!」
白銀狼の群れに跨った、毛皮の鎧を纏う一団。
先頭の一際輝きの強い狼の上で、2人の男女が遠吠えをあげた。
「........姉、さん」
漆黒の外套に入った、彼岸花の刺繍。
戦神と瓜二つの姿をした女性騎士は、誇らしげな笑みで部隊を率い駆けてくる。
野うさぎ、子鹿、大きな月の輪熊...背中に羽の生えた子供たちが聖歌を口ずさんで、動物達と共に手を振って。
光の波しぶきに乗った小舟が一隻二隻...大漁旗を振りながら、声を枯らして歓喜の呼び声を振り絞る船乗り達。
そして、輝く錦に身を包んだ老若男女の兵士達は、涙で揺らいでいるであろう視界の中、一糸乱れぬ隊列を披露し、歩みを進める。
「とんでもない綱を引いてくれたもんだ...日出ずる国の民」
淀んだ大地に引かれた線。
誰からともなく発された号令と共に、光と闇が激しく衝突した。
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続
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