事の顛末:最終章: 関ヶ原の戦い〜死闘 急襲〜
企画:ツワモノ達が夢の中(※BGMは ゆきの さんより)
事の顛末:最終章: 関ヶ原の戦い〜死闘 急襲〜
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荒れ狂うロック調、借りてきた感情のごった煮は、台風そのものだった。この世界に対する有象無象、妬みも嫉妬も傲慢も、暴風雨に乗せて誰彼構わず巻き込み傷つける。
ーイチバン、イイノガホシイー
不穏な隙間風の音で、おむぎの中から何かが吠えている。
しかし様子がおかしい。そこから一歩も動こうとしないのだ。影を何かで縫い付けられたかのように、おむぎの姿をしたソレは、歌いながらどこかもがいているようにも見える。
そして、日出ずる国の民が放つ歌を
一撃ずつ受け止めていく。
深い青の痛み...ああ、わかるよ朧月姫。
この勢い..陽の気配、ちゃそかな...
秋桜の色......この光、南国の大将さまだ...
ちーさんかな.....届いてるよ、ここまで
あぁ、これ..ぴよこちゃんの、闘志..
女傑は、最後まで女傑だし...
ああ、ヤバいなこれ。
凄いえぐられる..
かなめちゃん...だな、この強い感情
いさぎくんの音...そう、しっかり繋いでて
ゆめちゃん、今日も優しい音...
卯ノ花ちゃんも、呼んでくれる...
いつもははっきりと聞き取れない、境界の民の声が、何故だか今日は届いてくる。見えない妨げが無くなった関ヶ原の空気を、二人の高らかな歌声が駆け抜ける。
.これが....Reikaさんと、ゆきちゃん...?
いってぇ、内側が張り裂けそう
意識が..
...おきくの声...ちゃんと、離さない
あー...梟の声がする..夜でも届く、声..
そらるとさんだ、ああ、響いてくる
吠えてる声...しろしちがいる...
全部、全部聞き逃しちゃいけない。
一音たらず...!
鬼灯さんの声...天邪鬼の灯だ..
ねえまろさん、もっと呼んで..
西の大将...すぐ分かるや、声の強さ...熱..
まるちゃんの声、聞こえる...響いてくる
これ、柚月さんだ...引っ張ってくれるの?
ゆららの声...まっすぐ、ぶつかって..
こんな連中の中に、スパイごっこだなんて放り込むんだもんなぁ...。
めちゃくちゃだろ。ーーーー
絡みつく薄汚い悪意が引き剥がされて、すっかり体が軽くなってきた頃。仕上げとばかりに、右手で顔の面を握りしめた。分厚い木の板に感じた面は、いつのまにか風化していて軋んだ音をあげる。
パキ
渇いた音と共に、辛気臭い顔が粉々に割れ
残骸が闇へと還って...
「...対象の魂を絡めとり、引き寄せ、己の器に取り込む。」
歯を食いしばり怒りと困惑に打ち震えていたおむぎの口が、滑らかに動いた。
「魂を削り念を込めて重ね、精度高く研ぎ澄ました歌は、身をすり抜けて魂を引き裂く刃となる。」
ワナワナと震え、足元に転がる音の破片に手を伸ばそうとする左手を、しっかり掴んで制御する。体の部分部分が痙攣したように跳ね、時折反抗しているようだった。おむぎの表情だけが穏やかで、冷ややかだ。
「...以上の技をもって、自らに刃を立てて、諸共、命を断つ....ってね。
憑依持ちの禁忌戦術、命綱の本来の使い方。
先輩は一人でやろうとして失敗した。
あんたと正面から綱引きしながら、片手で刃物を持ったもんだから、意識を保つ方が疎かになったんだ。
寄り添って気付かないうちに縛りつけて、どっぷり依存させるのが道化師のやり方さ。
あとは、時がくるまで自由にさせて、しばらく昼寝.....時が来たら煽り耐性のない救世主達を焚き付けて、ぶち抜いてもらえばいい..!!
保険の命綱は.....はは、あいつちゃんと覚えてっかなぁ。」
面の下から現れたおむぎの顔は、満身創痍の様相に反して、誇らしげだった。
「おおよそ完璧、じゃね?」
よろめく足で、最後の一歩を踏み止まり、おむぎが左胸に爪を突き立てる。
ー少年少女は揃っていた。
ー今この身を持って、君にだけにしかできないことはなんだ?
これが答えだ。
「さァ...おめえの負けだよ、お面!!!」
最後の一節が胸を貫き、おむぎの体がゆっくりと瓦礫のベッドへ沈んでいった。
関ヶ原に吹き荒れる嵐は、溶けて散った。
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最終章 完...?
書庫出展
https://nana-music.com/sounds/03d278f9/
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