3章終幕: うちの子(更新)
対戦型ユニット企画:ツワモノ達が夢の中(BGMは寅次郎さん)
3章終幕: うちの子(更新)
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「新郎、新婦の入場です!!」
高らかな南国の戦神の声と共に、桜の木に垂れ下がった幕が上がった。
ぎこちなくも初々しい多種多様な花嫁花婿が、手を取り合って色とりどりの灯篭に照らされ現れる。
皆思い思いの白無垢、着物に紋付袴。
親とも言える戦神達も、しっかり留袖など着こんで後ろをついてくる。
どこか感極まったような顔で俯く島国の戦神の背を、北国の戦神がよしよしと撫でて宥める姿は、現世で良くみる結婚式の父親姿にも似ていた。
手を引いて居るのは、それぞれ一騎打ちに勝利した各国の猛者。
まんざらでもなさそうな者も居れば、すでに嫁の天下が見え隠れする面々も。
「えるくーーーーん!」
南国の一団から黄色い声援が上がって、ぱっと紙吹雪がまった。
「あ...」
「おめでとう!!!えるくん、すっごく素敵!!お着物似合う!!」
「よかったね...素敵なお婿さんゲットして...!」
「いや、よめ....婿で、いいのかアレ」
満面の笑みで手を振る南国の民につられて、プー田老とえるぜあが腕組みして笑って見せる。
「なんかさー、思ったんだけど」
「なんだい、プーさん」
優しく響く、南国のハッピーシンセサイザー。
契りの儀式、西の関の戦神が祝詞をあげる中、誰にも聞こえないくらいの小さな声で、プー田老が呟いた。
「他人同士が家族になれるって、スゴいよね」
「急にどしたの」
「いや、なんか...思わない?うまく言えないけど」
「まあ...」
優しく包み込むハミングに、いつのまにか5国の全員が手拍子して頭を揺らし、笑っている。
「儀式っていうのは、古来から形の無いモノを形にしてきたからね。血っていう形の繋がりを持たない者同士に、強い繋がりっていう形を与える...強い繋がりを得るっていう事自体に“どうなったら強く繋がるのか?”の定義がないから、家族っていう形を与える...現代じゃ結婚式するのが当たり前になってるけど、やっぱり改めて考えると”儀式“なんだよな」
「な、なんか、微笑みながらそういう難しい事いっぱいいうよね!?」
健やかなる時も、病める時も。
喜びのときも、悲しみのときも。
「はい!はい、儀式じゃなくてあれがいいな」
「言ってみて」
「だれでも家族になれる、魔法!」
「...悪くないね?」
こうやってお互い笑い合えたら乗り越えられるのかもしれない。
それは夫婦というよりも、兄弟姉妹の様だったし、はたまた友達にも見えた。
曲が終盤に差し掛かる。
「共に歌い、守り、闘い抜くことを誓いますか?」
ポプカが、ゆうが、梟がキラキラ輝く乙女の顔で見守っている。
契りを結ばんとする2人。
ふっと微笑み合って手を挙げた次の瞬間
........背後から大きな影がぬっと立ち上がって2人の間に割って入った。
「ちょっっっっっとまったああぁあ!!!」
「「ハイイィ!?」」
「いや、え....島国の!!」
「待てったら待てぇえい!!」
「おい北国、止めたまえ!どうしたんだコイツは!」
「とめられぬ...こうなったらもう、だだっこどうぜんじゃ」
プー田老をひょいと抱えて抱きしめる島国の戦神。
もはや全員の顔が驚愕に歪み、口があく。
「ぜええったい嫌だ!!こんな、こんな可愛い我が子を!そんなぽっとでの相手に!婿に出せるか!?」
「何を言い出す、取り決めただろう島国!ええい、南国!君からも何か...」
「激しく同意致します、娘はやらん」
「待て待て、いや、待て!!」
「あぁ、一度言ってみたかったこの台詞...!」
穏やかな微笑みの戦神に手を引かれ、色々と言いたそうな顔のえるぜあが花婿からあっという間に引き剥がされる。
「そんな事言い出すのならもとより我も!まだまだ我が子に教えたりぬ事ばかりよ!あと20年は手放せぬ!!」
「西の関ー!!わ、私だって...私だって我慢しておったというに!!もう知らぬ!!さあ、帰ってこい東の子らよ!」
ぎゃあぎゃあと言い合いをしながら、ちゃっかりと次々に我が子を回収する各国の戦神同士。
北国の戦神が両手にそれぞれ嫁婿と手を繋いで、激しく争う4国から抜け出て来た。
「...どこにもいってはならぬぞ。おぬしらは、ここせきがはらにおいて、かけがえのないわがこじゃ......かわいい、わがこじゃ」
ここはあの世とこの世の交わる世界。
どの世に於いても可愛い我が子。
この世だろうが、あの世だろうが、いつだってうちの子が一番可愛いのだ。
この不毛な騒乱の中で、そこに居た誰もが感じたであろう事が一つだけあった。
多分、家族ってこんな感じ。
第3章これにて終幕。
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合戦勝者:南国
一騎打ちを含めての総合勝者:東の関(☆2.5)
※なお☆の詳細・合計は、次章からのイベントと共に発表※
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