欠番:完結...日はまた上る
対戦型ユニット企画:ツワモノ達が夢の中
欠番:完結...日はまた上る
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「ふざけんな...ふざけんなよォ、ここまで上手くやってきたのに、なんで!!なんでこんなとこで!!くんな!!コッチに、来るなぁああァあ〝!!!!」
割れた声で黒子が絶叫する。
いつぞやの余裕綽々なニヤついた顔は何処へやら、目をギラつかせて呪詛の歌を怒鳴り叩きつける。
「まって、冷静にお話しましょう!!これ以上戦っても、お互い傷つくだけで何も解決しない!!」
ポプカの重ねた音が、米太郎の刃を全て包み込み、一つずつ溶かし、光の粉にして散らして行く。何度放っても、いくつ放っても、ポプカは瞬き一つせず正確に刃を落とし続ける。
「あの子達は選んだんだ!!ここで戦う決意を決めたんだよ、揺らがないように退路も断ってあげた、もうオマエらの元に戻る気なんざこれっぽちもないさ!!」
「じゃあ直接聞かなきゃ!!もう、一緒に歌えないのかちゃんと目を見て話したい...どんな答えが返ってきても、私達がきかなくっちゃ...!」
チョロチョロが一瞬の隙をついて前に駆け出し、米太郎の足元に向けてつむじ風を放った。巻き起こされた風圧でバランスが崩れ、砂埃で視界を奪われる。
「チィい....っ!!ナメた真似してんじゃねえよ、しつこい子供だなあ!!!」
米太郎ががむしゃらに放った音がチョロチョロに迫ったその瞬間、待ち受けていた柚月とポン太が立ちはだかり、互いを見合わせてスッと呼吸で肺を満たす。
響き合う音、音の壁がせり出して、暴力にも近いその音色を全て弾き返した。
「よっしゃー、ええ感じ!作戦通りや!!」
「チョロチョロさん、お見事です...!」
「作戦!?」
「そう...ちょっと勇気の要る作戦やねんけどな、俺ら何たって代表選手やから」
「ええ、多少痛い目に遭ったって、皆さんの想いを届ける責務を果たすと決めたのです...!」
「「「「イサギ!!!」」」」
「!?」
瓦礫だらけの部屋を、小柄な影が突風のごとく駆け抜け、飛び回り、一気に最後の扉の前に降り立つ。
目には涙がうっすらと溜まって、濡れたガラス玉のように光っている。
全身を震わせるような、渾身のラプンツェルが響渡った。
歌声が扉を叩く。
「開けて......もう一度だけ、みんなに会わせて....!!」
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開け放たれた扉の前で、仰向けになった黒子が1人。
--ここはホームグラウンド、一撃でいい朝迎えさせてやるよ、強制送還だ!!
「...。」
--....なんで、効かない!?
「.....くそ」
--諦めな、黒子。その術は今後もう二度と通用しないよ。
--僕達の力は戻りつつある...民に手出しはさせない。
--...我らの加護、戦神の意思は固いのです。
--そう、アンタの癇癪とは桁違いにね。
--さあ、ひきぎわは、みさだめるべきだとおもわぬか。
「くそ!!!!!!」
瓦礫に転がる米太郎が、床を叩いた。
再び大声を発しようと喉が鳴った瞬間、不機嫌な声を遮るように、たぬきを抱えたおむぎの手が口に被さった。
「先輩。」
「.....。」
「やめとこ、どうかしてるよ。今日。何があったの」
「.......。」
我に返ったように目を見開くと、米太郎は一気に脱力したのか、そのまま目を閉じてため息をついた。
ため息はそのまま、規則正しい静かな呼吸へと変化する。
おむぎの腕から抜け出たたぬきは、心配そうにもそもそと擦り寄ると、そのまま隣で眠り始めた。
「先輩...。」
おむぎの脳内で、戦神が去り際に放った言葉が反響した。
ー民に歌わせたあの歌は、諸刃の剣。
歌を武器に変える術は、術者の生命力を利用する。
貴様は、我が民を危険に晒し、使い捨てる気だったのかー
「.........聴いてないよ、そんなの。
ねえ、先輩」
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ストーリー分岐:大将達の活躍により、連れ去られた日出ずる国の民、境界の民を救出する事に成功しました。
国に帰還した民は、元通り各国に所属となり、離脱中の記憶や会話は全て共有可能となります。
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