2章: 戦神-真相
対戦型ユニット企画:ツワモノ達が夢の中(BGMはゆきのさん)
2章: 戦神-真相
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さて、残念ながら慰霊の儀は成就してしまったようです。
ご覧下さい。暴れまわった甲斐あってそこかしこ、日の光に照らされる、浄化され実体を得た不幽霊達。
再び声を得て、互いに認識し合う幸せを噛み締め、あたり一帯悲鳴と大歓声、いやあ実に素晴らしい!
...これで、容易くここから叩き出せるというもの。
じきに応援が駆けつければ、こちらの皆さまも、日出づる国の民の皆さまも。お引き取りいただくこととなります。
そういえば、渦中の戦神。
彼らはどちらへ消えてしまわれたのでしょうね?
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急に日が翳り始めた。
いや、日食だ。
黒い月の影が太陽に重なり、薄明るい奇妙な青空。
「...!?風が...」
チョロチョロが軽く指先を口に含み、静かに手をかざした。始響と顔を見合わせ、生き絶えたようにピッタリと止まってしまった風に、ゴクリと喉を鳴らす。
「ちょ、ちょっと...私達大将なんだから!そんな顔しないの!」
「わわ、わかってるけど!でも...」
上空で雲が淀み溜まる。
日食でぽっかり穴の空いた太陽が、怪しく雲の合間から光のはしごを垂らしている。
座り込んで身を寄せ合うゆう、まる、ゆめの少女達を、ポプカがそっとかばうように抱きしめた。
それを守るように、優とぽん太が身構えて、一歩前に出る。
きずくの不安げな瞳の中で、乱反射するわずかな光。
-まだ、信じたい-
「鬼灯、私...本で見たことがあるわ。大昔に神さまが岩戸に引きこもってしまった時、日食が起きて世界が真っ黒になってしまった、って」
「それじゃあ、やっぱり神さまは......私達のせいで、本当にどこかへ追い出されてしまった、ってこと?」
「そんな...!」
プー田老が、草はらにひざをついて崩れ落ちた。
手のひらに収まった御守りをそっと撫でて、震えた溜め息を一つこぼす。
「そんな.....せっかく大事な名前、くれたのに。お礼も言えないまま、寂しいまんま、神様居なくなっちゃうの?」
-ほんの少しでいいんだ、-
辺り一帯が静寂に包まれた。
闇に身体が溶けてしまいそうな感覚にまとわりつかれ、輪郭がぼやけてしまいそうだ。
-光が欲しい...-
近くに居るもの同士、背を合わせ、指先で触れ合い、小さな声で名前を呼び合い存在を確かめる。
-光をあげなくちゃ-
何故だろうか、こんな世の終わりみたいな風景に放り出されたのに、誰一人としてうろたえはしなかった。
畏怖の感情を超えて湧き上がるその感情は、深さを増す暗闇の中でだんだんと強くなっていく。
そこに居る誰もが、確かに同じ事を考えていた。
-そうだ、残された光で、照らし合えばいい-
本当に一瞬。
時が止まったような気がした。
次の瞬間。
光が破裂するように、太陽を中心としてものすごい爆風が降り注いだ。
叫び声も出ない。
目と口を開きっぱなしにしたまま硬直した米太郎を、おむぎがすごい勢いで引きずって木陰に避難する。
強い光に目を閉じて地面に伏せた全員の背を、突風がぼうぼうと踏みしゃいで駆け抜けた直後、凛とした鈴のような音が辺り響渡ったのが聞こえた。
幻聴だろうか?その音はどんなに風が強く耳を塞ごうとも、頭の奥から湧き出てやまない。
「......うた」
少年の声が、そう呟く。
「歌が、聴きたかった」
光が一面、世界を真っ白に照らし出し、雪景色が見えた。
光の粒が水しぶきとなって打ち付けて、荒波が降ってきた。光の根が地を這いやがて生い茂り、光の花びらが風に舞い、錦のような閃光が、道を作る。
「.....!?」
逆光のなか、光の道を5つの大きな影がゆっくりゆっくり、歩いてやってくる。
継ぎ接ぎされた毛皮の鎧に身を包む、獣骨の仮面を被った少女。
漆塗りの甲冑に、彼岸花の刺繍が入ったマントをなびかせる線の細い青年。
錦の羽織りをはためかせ、穏やかな微笑みを浮かべた美しい白髪の老人
筋骨隆々、破れた着物を巻きつけ纏う、全身古傷だらけな眼帯の女性。
白絹のような豊かな長髪を垂らした、ひときわ大柄な袈裟を纏った男性。
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やあ、これは大変な事になってしまいました。
なんたる誤算
皆さま、もうお気づきでしょう。
皆さまの歌声は私共の想像を遥かに超えて、彼らをここに呼び覚ましてしまったようです。
主人を迎えた陣跡は、みるみるうちに蘇って参ります。
桜は満開に、朽ち果てたはずの旗に血の気が戻り、鮮やかな軍旗がはためく本陣に。
蘇った戦神は、陣にてあなた達を抱きしめるべく待ち構えているでしょう。そして、儀式などではない本当の国取り合戦を、光に満ちた瞳であなた達に持ちかけるのです。
さあ、2章の真相はここに...これより波乱の第2幕、始まり始まり。
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「どのようなものであれ、業務報告の提出期日...納期はぴったり合わせるのが、わたくし達公僕の定め...」
おむぎの手にはパリっとした紙質の巻物。
自分の身の丈より遥か上のそれを、黒い布の下から見上げた。
「しかしながら...」
組み終わったはずの結界の印は、何の効果も発揮しない。
「こんなの、マニュアルに乗ってないじゃんかよ...」
-2章本戦ルールへ続く-
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