2章:戦神-序〜事の顛末〜
対戦型ユニット企画:ツワモノ達が夢の中(BGMは寅次郎さん)
2章:戦神-序〜事の顛末〜
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様子がおかしい。
私達はすぐに気がついた。
「なんで迷い込んできた一般人が、式神なんて連れてんだ」
「御守り.....あれ、使い方知ってるんじゃ」
「んなわけあるかーい、神さまの贈り物に違いはないけど、使うにはそもそもの起爆剤が要る!」
「起爆剤......霊感....霊力、生命力....」
見間違いのはずはない。
ぴよ子の肩にとまったヒヨコは、キラキラと光の粉を撒いて音を奏でている。
あちこちで地面が僅かに振動し、空気が歪むような圧を感じる。共鳴だ。一人ではない、皆自らが使えることを知らないまま、がむしゃらに歌って、己の中に眠る力を目覚めさせているのだろう。
「米ちゃん」
背後から聞こえた声に振り向く必要はなかった。
呼び止められたのは3度目だ。
「なんだね、女傑」
「...白星、最後のいっこ。」
「あらら、まだやんの!?女傑〜、2度あることは3度あるってさあ、昔の人は言ってたみたいよ」
「あれれ、おっかしいなあ〜...3度目の正直っていうのも、私聞いたことあるんだけどな」
投げて寄越された白星が風を切って私の左手に収まる。
力強くパシ、と届いたそれは、どことなく他の星より重く感じた。
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声で刃を交えて、歌を盾に受け止める。
消耗戦を狙うつもりだった私は、幾度も音をぶつけ、斬りつけあった後、安易に受けの姿勢をとった。
しかし、それはほんの一瞬の出来事だった。
「っ....ぁああァあぁあああァ!!!」
「!!」
くらげの声が裂けるように、響きあうように、音色となって編みこまれる。
それはまるで、3本の槍で盾ごと貫かれたような衝撃だった。身体が吹き飛び、予想外の出来事に受け身も取れなかった私は、なんとか上体を起こして相手を視界に捉える。
これは、多分もう一撃くる。
彼女、くらげは顔面蒼白。足がもつれている。
無理矢理息を肺にねじ込み、最後の一節を歌い切ろうと拳を握るが、手のひらは虚空を掴みバランスを崩す。
荒れ果てたこの草原には、誰の身を支えるものもない。
「...やめとけ、女傑!それほんと、下手したら夢から覚めるどころの話じゃ...!!」
制御の効かない素人の能力で巻き添え事故だなんて、まっぴらごめんだ。
血気迫る様子にゾッとして大声を出した途端、彼女の前をさえぎるように、人影が壁を作った。
「そう、無茶はよくない...いや、いいとこ持ってかれっぱなしってのも、なんかねぇ?」
「この力.......まだ私達には諸刃の剣、と言ったところでしょうか。もう少し用心して付き合う必要がありそう」
「東の関..!しろしち、La fir」
「くらげねえちゃーーん」
「西もちゃんと来てるぜ?.....一部、あんたんとこの後輩とノーガードの殴りあいして離席中だけど」
「ノーガードの殴り合い!?」
かなめに支えられてへたり込んだくらげから、そのはるか向こうに目を凝らす。おむぎが、足止めをくらっている。
北のイサギだろうか、いや、島国の連中もいる。
施錠、もとい立ち入り禁止の結界が張れなければどれだけ時間を稼ごうと無駄。おむぎはこちらに気づく気配もないし、気づいたところで流石にこれだけの人数相手に手負いでどうこう出来るきもしない。
よくあたりを見渡せば、南国と北国が後方で隊列を組んで待機している。大将2人は後方支援に徹しているのだろう、互いに目配せし合って頷いた。
「...いっこどうしてもききたいんだけどさ、君の支えてるそのこ。隣どうしの君ら、背中を任せてるその辺の人達。
全部、この間あったばっかりの赤の他人じゃない。
夢から覚めたら最後、顔も分かんないような相手を、よく信用できるね」
「まあ、それはそうだけど」
-今ここではみんな、”日出づる国の民同士“だから。-
その時さらりと返ってきた声の主は誰だったろう。
私はとても昔、どこかで聞いたような返事だと思った。
-------------/
続
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