【声劇】『月花』
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【声劇】『月花』
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なんて美しいんだ。
初めて見た時から、ずっとずっとそう思っていた。
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『月花』
星に願いを。
夜空に祈りを。
月になりたい。何度願ったことだろうか。
行く人々がどれだけ美しいと感嘆しても、ちっとも満たされなかった。
月光を花弁いっぱいに吸い込み、
いつか、いつか月になれると信じて、よだかの飛んだ紺青に手を伸ばす。
あの空に届くなら。
想像するだけで、冷たい雨も、千切れそうなほどの渇きも、
なんだって乗り越えられた。
「きみは優しいね。」
そういったのは足元を転がる卵。
「きみはなんて美しいんだ。」
これはかの恒星の言葉。
花は、水溜まりを覗き込んだ。
花は、気づいていなかった。
花は、もう月だった。
伸ばした手はもう、夜空に触れていたのに。
今宵も星に願いましょう。
どうか月になれますように。
#三月声劇
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