§幻想舞踏会§ 第七話~五隊長の対面~
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§幻想舞踏会§ 第七話~五隊長の対面~
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第七話~五隊長の対面~
(北ってこっちかなぁ…。
この中央の島、思った以上に広い…)
最後に島へと招かれた部隊である、
黄晶麒麟隊の隊長である朱は、拠点の島を出て中央広場を北へ進んでいた。
当たりを見渡すと、共有の広場であるこの島には既に
チラホラと他国の隊士と思える人達がいた。
北の方を見ながらソワソワとする女性
お洒落な服に身を包む女性達
魔導騎士の鎧を身に纏う集団
歓喜しながら様々な人をまるで観察するかの様に輝く瞳で見ている女性と、それを必死に制止する学生服の人達
(みんな他国の人達なんだろう…。
…っといけない!早く会合室へ行かなくちゃ。)
朱は足早に北のエリアへと向かった。
~~~
剪定された庭木のアーチをくぐり、小道を進んだ先にポツンと小さめの白い円柱型の小屋が見えてきた。
窓からは人影が伺える。
朱は深呼吸をひとつし、身なりのチェックをしてから中へと入った。
「…失礼します。」
恐る恐る入室すると、中央に木製の円形テーブルが一つ、周囲には椅子が5脚、
そしてそのうちの4脚にはすでに4人の人物が座っていた。
「あら、黄国の宰相さんではありませんか。ごきげんよう。」
朱が声をする方へ視線をやると、室内の最奥に、白の国の姫君が優雅にミルクティーを傾けていた。
―…絶対一国の姫らしい行動をしてくださいね!!
そうまりーに念を押された番長は、外交時のキャラを完璧に装っていた。
「光姫様ではないですか!先月の外交による食事会では…」
他国の姫とはいえ見知った顔を見た朱は安堵の色を見せた。
そう言って、番長と朱が楽しく話し始めた傍らでは…
ていなんが、レイカを口説いていた。
「ハァイ、こんな綺麗で艶やかな蝶のような女性に会えると思わなかったよ。名前とお国を教えてくれる?」
「お上手ね、私はレイカ。黒の国でブティックを営んでいるわ。」
もちろん、ていなんもジェイドに念を押されている。
―…『姫』らしくお願い致しますね?女性を口説くなんてもってのほかですよ。
だが、そんなのお構いなしだった。
そんなやりとりを見ながら、そうまはにこやかに笑っていた。
「にぎやかだなぁ。もっと重苦しいものを想像してたのに…
まあ僕はこっちの方がありがたいけど。」
~~~
幾分たったであろうか、
中央にある円形テーブルの真ん中が光ったと思うと、
それぞれの椅子に向かって文字が映し出された。
【各部隊 隊長に告ぐ
全部隊の入島が確認された。
今後隊長各位への伝達事項
及び会議はこの部屋にて行う。
一般隊士の入室は禁止する。
またこちらが公開して良しと
認めた案件以外は
他言してはならない
また、この後
中央広場上空
天空告知板にて
第一試合の開戦を告知する
各隊留意されたし。
試合方法の詳細を説明する
―――…
――…
―… 】
~~~
五隊長は各説明を終え、
北のエリアを後にして中央広場へと戻った。
「光姫様!」
まりーが(本性が他国の隊長にばれていないか)心配そうに番長へと駆け寄る。
「拠点へ戻りましょう。皆に伝えることがあります。」
番長は(ちゃんと姫らしくしたよ、マジで。と)ニッコリ笑うと、まりーを引き連れて広場を後にした。
「私も皆につたえなくては…。」
そうつぶやいたレイカはいつも店でミーティングをする時と同様に
パンパンッ!!
と、手を叩いた。
「集合」
「「「はい、オーナー!」」」
広場で各自遊んでいた、お洒落な服を着こなす女性が集まる。
「他の子は?」
「拠点にいますよ~」
「では行くわよ。」
そう言って、引き連れて広場を後にしようと歩き出した。
「レイカちゃん!そのお洒落で可愛らしい小鳥達の輪に僕も…!」
ていなんがレイカ達に駆け寄ろうとすると…
「ていなん様」
ガッシリと襟首を掴まれてしまった。
「どうやら報告事項がおありのようで…我々も島へ戻りますよ!」
「ちょっ、僕は姫だよ!?そんな掴み方は…」
ギャイギャイと魔導騎士数名に担がれながら、ていなんも連行されていく。
「はぁ…
一度スイッチが入れば、元々の頭の良さから真面目一筋の頼りになるお人柄なのに…。
女の子を口説けるとなるとすぐこれなんだよなぁ…。」
ジェイドの溜息交じりのつぶやきは誰にも聞かれることは無かった。
そんな一部始終を見届けたそうまは、
「さて、僕も自分の島へ帰るか…。
ボブは説明ちゃんとしてくれてるかなぁ~」
(真面目なボブの事だ。ちゃんとしてくれてるハズだな。)
そう考えながら、広場へ目をやると
「ああ!あれは!!光姫様!!ちょっと身体を調べさせてくださ…」
「うわぁ!!ば、バカやめろ玲華!!」
「玲華先輩!侮辱罪で俺達処刑されるって!!」
「お姫様にそれはまずいよ~!」
白の拠点島へ帰ろうとしている番長とまりーに、
後ろから襲いかからんとばかりの玲華を、
愛次、さき、ハンペンの3人が必死に制止していた。
ボブはやれやれ、と肩をすくめるとほったらかして広場の地質を調べていた。
「ゆ、雪季さん!!」
「ちょっとだけ!ちょっとだけだから!!欠片がほしいだけだから!!」
「ちょっダメだって!」
そんな叫び声でそうまが違う方向を見ると、
女子が肩車をしながら必死に上へ手を伸ばしており。
もう2人がそれをやめさせようとしていた。
それに気づいた朱が真っ青になる。
「な、何をしてるの!?」
「あ、朱!雪季が七色の宝石の欠片を魔法クラブの研究対象にするんだって言って…」
「ええ!?」
するとキャンが、
「ふぅ…」
と一息つくと、ジャンプして
雪季に見事な上段蹴りを繰り出した。
「ふぎゃ!!」
肩車から崩れ落ち、白目をむく雪季をキャンが引きずるように引っ張る。
「朱さん、猛獣沈静化完了です。島へ戻りましょ。」
そんな流れを見ていたそうまと朱はお互いに目をあわせる。
「お互い頑張りましょうか…」
「…ええ、色んな意味で…。」
こうして各自島へと戻ると、
その後空へは、
第一試合の開戦告知が映し出された。
戦いの火蓋が切られるのは十八日後…
各隊の戦いへの準備が始まった。
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