舞姫①
【朗読】コトハ
舞姫①
- 7
- 2
- 0
『雨夜の朗読会』その1です。
高校時代好きだった舞姫、朗読いたしました。
素敵な雨音は、ういさんよりお借りしています!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
石炭をば早はや積み果てつ。中等室の卓つくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきも徒いたづらなり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌カルタ仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば。
五年前いつとせまへの事なりしが、平生ひごろの望足りて、洋行の官命を蒙かうむり、このセイゴンの港まで来こし頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新あらたならぬはなく、筆に任せて書き記しるしつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、当時の新聞に載せられて、世の人にもてはやされしかど、今日けふになりておもへば、穉をさなき思想、身の程ほど知らぬ放言、さらぬも尋常よのつねの動植金石、さては風俗などをさへ珍しげにしるしゝを、心ある人はいかにか見けむ。こたびは途に上りしとき、日記にきものせむとて買ひし冊子さつしもまだ白紙のまゝなるは、独逸ドイツにて物学びせし間まに、一種の「ニル、アドミラリイ」の気象をや養ひ得たりけむ、あらず、これには別に故あり。
#ろーどくかい
Comment
No Comments Yet.