存在証明
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存在証明
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私は空虚な存在だ。
私にはなにもない。なにも詰まっていない。
ただ、歌手としての存在だけで、私自身は空っぽなのだ。
私から歌を取ったら何が残るだろうか?
歌以外、この人生でやってきていない。
私のすべては歌で形成されてると言ってもおかしくはない。
誰かが作る歌を歌い、自分自身で作る歌を歌う。
観客は歌の女神だと讃えてくれるが、空虚な存在が女神と名乗るに相応しいのだろうか。
私は死ぬまで歌を作り、歌を歌い、命を捧げるだろう。
誰のため?それは、私のためだ。
私が空虚でないことを自分自身で証明し、納得するための。
観客のためになど歌わない。
観客を喜ばすならば他にいくらでもいる。
だが、私は私のすべてを捧げる歌であり、声だ。
そこには私しか客はいない。
声が枯れようとも声が出ずとも、歌わなければならないのだ。
1分1秒無駄になどできない。
寝る間も惜しむのだ。
それが、歌手である私の責務であり、存在を維持するための維持装置としての役目だから。
だから、今日も私は歌う。明日も明後日も来年も。
私の声は止まらない。
私の歌は止まらない。
止まったその時が私の最期なのだろう…
作者コメント:
噛みそう…
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