幻想月華クリスマス企画サウンド③
四神の民ver②
幻想月華クリスマス企画サウンド③
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#声劇 #幻想月華 #イヤホンヘッドホン推奨 #クリスマス企画
クリスマス企画サウンド3つめです!(クリスマス過ぎた?そんなことは気にしない)
今回はクリスマス企画サウンド①の続編となっております!
碧はプレゼントをあげられるのでしょうか?(*´ω`*)
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(台本)
月宮邸。
小高い丘の上に、巨大というほど大きくない木造のお屋敷がひっそりと建っている。
平屋のそれは、周りに建っている民家とそう大差がなく、『民と同じ目線で』という月宮家の当主の心が感じられるようだ。
その月宮邸の広間から数人の弾けるような声が聞こえてくる。
(全員)「かんぱーい!!」
(麻衣)「みんな!どんどん食べてね!私たち3人で作ったのよ!」
いつもよりにぎやかな広間には、真白、碧、朔、風華、麻衣の他に、晴明と、晴明に呼ばれた岦成の7人が大きめのまるいテーブルを囲んでいた。
ちょうどクリスマスパーティーが始まったところらしい。
(真白)「わあああ! クリスマスってキラキラだね!」
(碧)「おおお! いっただっきまーす!うまぁー! すっごく美味い!」
(風華)「あ、朔! これ美味しいよ〜。はい、あ〜んっ!」
(朔)「えっ!? ……あ、あーん(モグモグ)……美味い……」
(風華)「えっへん! 私が作ったんだよ〜」
(岦成)「アタシもやるぅ〜! 晴明ちゃん! あ〜んっ♡」
(晴明)「自分で食えるから大丈夫だ」
(岦成)「ひどいわっ!!」
クリスマスパーティー定番のメニューであるローストビーフや七面鳥の丸焼きなどの肉料理はもちろん、マリネやポテトサラダなどの野菜類、カナッペにポタージュ、ちらし寿司のような和食まで。
もうこれ以上机に皿が乗らないくらいのボリュームだった。
みんなが話に花を咲かせる隅で碧は最初の1口で箸が止まっていた。
そわそわと箸を取ったり置いたり、お茶を飲もうとコップを手に取ったのに飲まなかったりとなんだか落ちつかない。
(碧)「……真白喜んでくれるかな……」
(朔)「俺がみんなを止めておくからプレゼント渡して来い」
(碧)「ありがとう朔兄……」
朔に背中を押され、碧がガバッと立ち上がった。
(碧)「ま、真白!」
想像以上に大きい声が出てしまい、みんなの視線がこちらへ向く。
顔を真っ赤にしながら真白の手をとり、縁側へ向かった。
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昨日から降り続ける雪で地面はもう真っ白だった。
雪の白は真白に良く似合うな、なんて思いながら縁側の床を軋ませる。
いや、秋の紅葉も似合……あぁ夏の向日葵だって……やっぱり春の桜が一番かも……。
緊張を紛らわすように考えていると、ヒュッと風が吹いてほっぺたに雪が張りついた。
ピリピリとした冷たさに急かされてやっとこさ口を開く。
(碧)「……ごめんね真白。寒いでしょ?」
(真白)「ううん! 全然平気! それでどうしたの?」
少しだけ首を傾ける仕草は、碧の緊張度メーターをMAXにするのに充分だった。
胸がどきどきと張りつめていくのを感じる。
ああー、やっぱりダメだ、喜んでもらえなかったらどうしよう……。
ポケットの上から真白にあげるために買ったプレゼントに触れる。
ただ街をフラッと歩いていた時に見つけただけの、どこにでも売っているようなものだ。
しかも、『プレゼント用に包装してください』なんて恥ずかしすぎて言えず、自分でリボンを買って結んだのだ。
だからプレゼントらしい箱にも入れてないし、リボンだって結ぶ時に手が震えて不格好な結び方になってしまっている。
かといってこのままじゃ絶対に嫌だし、買ったものはちゃんと渡したい。
もしかしたら、万が一、いや億が一にでも喜んでくれるかもしれないし……っ。
ええいなるようになれ、と手汗ですっかり冷えた手をポケットにつっこんでプレゼントを取り出す。
(碧)「………これ! 真白にあげたくて……」
真白の前に突き出すようにして差し出した。
真白がどんな顔をしているかなんて見れないというか、そもそも顔をあげられない。
指先はガチガチに冷えているのに頭からはゆげが出そうだ。
(真白)「……! ……わあ……かわいいっ!!」
真白のはしゃぐような声に、碧はやっと顔をあげる。
目をキラキラさせて、本当に嬉しそうだ。
その笑顔に、暖かな日の光で凍った氷が溶けるように感じた。
(碧)「オルゴールっていうんだよ。ここをこうして……ほらっ」
(真白)「綺麗な音……ありがとう碧っ!!」
──笑顔に殺される。
初めてそう思った。
危うく鼻血が出るところだ。
碧が、いまにも飛び出してきそうな自分の心臓と戦っていると、今度は真白がそわそわとし始めた。
(真白)「……あのね、私からもあげる!」
(碧)「……ブレスレット?」
手に握らされたのは、ちょうど自分の手首のサイズにぴったりであろうブレスレットだった。
(碧)「綺麗な翡翠色……」
(真白)「碧は無理してばっかりだから……お守りにふぁあ!?」
驚きに近い嬉しさが爆発するようで、蒼は思わず真白に抱きついていた。
(碧)「ありがとう真白っ! 僕、すっごく嬉しい……!!」
(真白)「碧……! ……あっ」
真白の腕が碧の背中にまわされる直前、真白の身体がピタリと止まった。
(碧)「? どしたのましr痛ぁっ!?」
ゴッという鈍い音が後頭部に響いたかと思ったら、じんわりと痛みが広がっていく。
電気をつけなかったから薄暗いはずの縁側はいつの間にか明るくなっていて。
しかもなんか背後からものすごく不穏な空気が漂ってきていて。
ギギギ、と油の切れた機械が動くように振り返るとそこには、
(風華)「あーおーい? 何やってるのかな〜?」
(麻衣)「クリスマスだからって調子にのったらダメよ〜?」
暗い顔をした風華とおたまを持った麻衣がいて……。
(碧)「へ、ちょ、朔兄!?」
(朔)「…………すまん、無理だった」
2人の気迫に押されるようにして障子の隙間から申し訳なさそうな朔の声が聞こえる。
(碧)「えええーっ!? ちょ、二人とも落ち着いて!」
ダッ!と風華と麻衣が同時に飛びかかるのを間一髪で避けた碧は、縁側を全力で走って足袋のまま庭にダイブした。
ものの数秒ですでに庭は足跡だらけだ。
部屋の奥から岦成と晴明が出てくる。
そして縁側に腰かけて持ってきた熱かんをあおると、
(岦成)「……結局は、いつもと同じなのね」
苦笑ぎみにポツリとつぶやいた。
それに晴明は、足跡がつきまくった庭に目を向ける。
そこには寒いはずなのに頬を赤くしながら駆け回る3人がいて。
追いかけっこがだんだん雪合戦になってきて、真白や朔まで巻きこまれて。
大人になってしまった今、雪合戦の何が楽しいのかわからないのだけど、みんなが無駄に笑っている姿があって。
四神の民という宿命を背負う者の人生が、彼らに関わる全ての者の人生が、平穏なはずがないのに。
なのに、みんな心から楽しそうに笑っていて。
……それになぜかちょっとだけ、楽しいような、そんな気分になって。
晴明は本当に小さい声音で、
(晴明)「……全く……騒がしい奴らだな」
と、そうつぶやいた。
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