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花飴✽
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——昨日、彼もあの花火を見ていたのだろうか。遠く水平線に反射したあの夏の大輪を。
彼は私に何を伝えたかったのだろう。手紙に託してまで、何を話したかったのだろう。
今となってはわからない。
恐らく二度とは会えない気もしている。全くもって当たり前の話なのだが。
水平線に吸い込まれかけている斜陽が眩しくて思わず目を細めた。
風に飛ばされてしまったのか、いつの間にか傍に置いていた紙片は消え、代わりに小さな虫がベンチに鎮座している。
何の昆虫だろうかと見つめると、まるで視線を感じたとでも言うかのように小虫は身を揺すった。心許なげに。
なんだか件の彼が虫になってしまったみたいで、少し笑ってしまった。
時計は十八時過ぎを刻んでいた。
夕暮れの空にもう一度伸びをして、筆を取った。
今日はどんな空を描こうか、そればかり考えている。
花と水飴、最終電車
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