月色Chainon
ももいろクローバーZ ももクロ
月色Chainon
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📖Dear My Fairyland📖
第7話『月夜ロマンス』
ジョーたちが賞を取ったあの日から、学院内は『物語クラブ』の活躍で持ち切りでした。噂はノーブルの元にも届き、一部の生徒たちは特待生ばかりの『物語クラブ』のことを素直に見直してくれたようでした。
「あなたたちのクラブ、あのディケンズ新聞社のコンテストで幾つも賞を取ったんですって? すごいわね」
その日、隣のクラスのノーブルたちに話しかけられたメグは、そこで初めて、賞の影響がどれだけ強いものだったのかを悟りました。メグは素直に微笑むと、彼女たちの方を向いて頷きます。
「ええ、私の妹やお友達は、とっても素晴らしい作品を書くのよ。あなたたちも読んでみる?」
「……! 良いの? その、私たち、今まであなたたち特待生に、あまり良い態度でなかったから……」
少女たちは途端にしどろもどろになって目を泳がせました。本当はメグたちに謝りたいけれど、まだ小さなプライドが邪魔をして謝れない。そんな気持ちを悟ったメグは、目を細めて優しく言葉を続けました。
「今度ね、三年のセーラさんのおうちでお茶会をする予定なの。良ければあなたたちも一緒にどう? そこで一緒に『物語クラブ』の作品を読みましょうよ」
「メグさん……」
陽だまりのようなメグの笑顔は、どんな人の心だってあっという間に溶かしてしまいます。少女たちは、少し照れくさそうに目を潤ませてメグの手を取りました。
「ありがとう。それから、今までごめんなさい」
それが本心から出た言葉だと、メグにはすぐに分かりました。だからこそ、彼女はそんな少女たちと改めて仲良くなりたいと思ったのです。
数日後、メグと少女たちはセーラの家のテラスに招かれていました。馨しい香りのお茶と斬新で引き込まれる作品を楽しむうちに、最初はぎこちなかった少女たちは、いつしか躊躇いなく話に花を咲かせるようになりました。
「私、妖精の国の話が好きだわ」
「私はこの恋物語かしら? こんな素敵な男性がいたらなぁ~」
仲間の書いた話を褒められるのは、メグにとっては自分のことのように嬉しいものでした。誘ってくれたセーラも、安堵した様子でニコニコと話を聞いています。するとその時、庭先から一人の男性が姿を現しました。艶やかな黒髪と凛々しい眉が特徴的な男性は、セーラを見るなり目を細めて手を振りました。
「セーラさん、こんにちは」
「あら、ブルック先生。今日は授業はなかったはずですけれど……?」
「あぁ、今日はお父様に呼ばれてまして。おかげさまで、来年からも契約を続けていただけることになったので」
「まあ、それは嬉しいです。私、ブルック先生の授業が大好きですもの」
セーラと男性はしばらく談笑を続けていましたが、メグたちが興味津々に見ていることに気づくと、セーラは男性を紹介してくれました。
「こちらの方はブルック先生よ。私の家庭教師をしてくださっているの」
「初めまして。カール・ブルックと申します。皆さんはセーラさんのお友達ですか?」
「ええ、同じ学校の友達です」
少女たちは屈託のない笑顔で挨拶をしていきます。しかし、メグだけは何故か話を切り出そうとしません。いつものにこやかな彼女はどうしたのだろうとセーラが顔を覗き込むと、なんとメグの顔は今までに見たことがないほど真っ赤になっていました。それを見た少女たちは、口元に手を当てたりクスリと笑ったりして、その状況を楽しんでいます。
「あの、どうかされましたか?」
「えっ、あの、いえ……なんでもありませんわ。私、マーガレット・マーチと言います。よろしくお願いします」
「ああ、だからメグさんと呼ばれていたんですね。良い名前だなぁ」
ブルック先生は、感心したように顎に手を当てて、メグの名前を褒めそやしました。そのせいで、メグはますます赤くなってしまっています。いつもは見られないメグの意外な表情に、セーラは目をきらきらと光らせ、二人の会話を見守りました。そして、これからは頻繁にメグを招いてあげよう、と密かに決めたのでした。
読書会からしばらく経つと、ノーブルの中のほとんどが、特待生に対して嫌な態度を取らなくなっていました。それどころか、今までの断絶を埋めるかのように、両者は趣味や流行りの話題を通じて仲良くなっていったのです。セーラの家で行われる読書会もすっかり恒例となり、参加する生徒たちもどんどん増えていきました。季節が冬に近づくにつれ、日が落ちるのが早くなっていましたので、読書会の日はたびたびブルック先生が迎えに来てくれて、生徒たちを寮まで送ってくれました。すると、生徒たちは決まってメグとブルック先生を隣同士で歩かせました。月夜の中楽しそうに語らい合う二人は、見る人皆が幸福な気持ちになるほどあたたかい雰囲気で満ちていたのです。
そうして日々を過ごすうち、以前までの確執が嘘だったかのように、学院には常に穏やかな空気が流れるようになりました。けれど、メアリーだけは依然としてあの部室棟と花壇にこだわったまま、特待生を睨みつける目は日に日に険しくなっていました。セーラは、そんな彼女を見て何かを決心したようでした。雪のちらついたある日、彼女は『物語クラブ』の面々に相談を持ちかけました。
「メアリーの過去について、あなたたちに話したいことがあるの。その話を聞いた後、どうするのかはあなたたちに任せるわ。でも、私はできることなら、皆にメアリーのことを救ってほしいと思ってる。皆になら、それができると思っているの」
必死さを含んだ声で語られたセーラの話は、その後『物語クラブ』の心を大きく揺るがすことになるのでした。
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『月色Chainon』
🌼メグ・マーチ(CV:スノーク)
🛋セーラ・クルー(CV:なつ)
🌼朽ちた花びらに 黄昏の翅(はね)が
冷んやりと 流れてゆく
Viridian 風 mysterious
🛋もう触れられない あの日の命を
刻んでゆく螺旋を
🌼紡いで🛋織りつないで
🌼🛋このまま
🛋amour 詩人の様に 奏でて
🌼いま 暗闇の淵 抜け殻 抱きしめて
🌼🛋悲しみの嘘を忘れない その物語 aurore
🌼夕映の時間は もう無いけれど
🛋掬いあげた化石 moon fragment
🌼🛋きよらなる傷は癒えずに
その物語 lumiere
🌼離さないで 果てない愛人(ひと)
🛋生きてゆくの Chainon
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📖次回
第8話『部室棟の秘密』
7/13 20:00 公開
#Fairylandの世界 #月色Chainon
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