【一人台本】音のない楽園

朗読者【ion*】

独占欲… 満足感と罪悪感 #声劇 #台本 #1人声劇 #mitagraph 「言えないでいるんです 彼女は、あんまり人と話すと疲れるって 私は慣れが必要だって言っているんですけど… だって、私だけじゃ駄目だと思うんですけど なんとかして欲しいって泣いてるんです… 私にだけ、言ってくれて …本当は誰にも言わないでって クラスの子にも、先生にも 親にも言わないでって…そう、言われてるんですけど 私、もうあの子が泣くの見たくないんです どうしたらいいですか？…先生」 今日も手話を一生懸命に覚える彼女を 私はそっと眺める 付き合わせてごめん、と彼女は手に文字を書く 「何言ってんの、私たち友だちでしょう」 謝りながらも嬉しそうに笑う彼女に 覚えた罪悪感を見ないふりした 彼女は中学に上がって事故にあい、音のない世界にいる だから友だちらしい友だちも私しかいなかった いや、私しか作らせなかった 強い独占欲 彼女の綺麗な心は私だけのものでいい 音のない世界 それがどんなものか私にはわからないけれど 私と彼女にとっては安心する場所 誰の邪魔も入らない楽園なのだ