夜標
夜標
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「今、深夜の四時になりました。
空はもう色を戻しだして、
朝刊を運ぶバイクの音が聞こえ出しました。
鳥の声に海のさざめき、
ドラマだったら素敵なシーンになる気がします。
君の返信を当てます。
用がないのにメールを送るな。
しかもこんな明け方に。馬鹿なのか?
当たってたなら送らないでください。
いいじゃないですか、電話じゃないだけ。
私は、君とたわいもないお話がしたいんです。
初めて明るくなるまで歩きました。
パトカーの赤いランプが見えたら道を変えて、
パックマンってこんな気持ちなんですかね?
歩きながら沢山のことを考えました。
警察は、もうどこまで知ってるのかとか、
犯人はバレてるのかとか。
殺した理由はバレてるのかな?とか、
遺書って書いた段階で死ぬのかな?とか。
だったら私は、殺人犯の幽霊だな。とか。
ここに君がいたら空気も読まずマジレスをして、
気まずい雰囲気にしてくれる事が想像できます。
今、私の目の前に海が見えます。
海の上に光が灯っていて、
船でしょうか?
まだ朝早いのに大変そうです。
知ってますか?
船は、夜標(やひょう)といって、
自分の位置を確かめる為にライトをつけるそうです。
自分が今どこにいるのか。
場所は間違えていないか。
ここまで歩いてくるのにだいぶ助けてもらいました。
今私は伊勢海老が食べられるオオマサ?食堂の
看板の足元に座っています。
多分、ずっとここにはいられないだろうから、
ここに、ランプをつけたままの私の携帯を置いておきます。
殺人犯の幽霊は、ここにいました。
いつか、
ここに来て、同じ景色を見てください。
綺麗ですよ。この町は。」
———
物語の中でくらい、
望まず悪事に手を染めてしまった者の
逃げ切り勝ちがあってもいいじゃないか
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1commnets
- 優雨〚ユウ〛お借りしました。素敵な台本ありがとうございます🙏✨