帝国少女
Carpe Noctem☾⋆
帝国少女
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𝟏𝟖 : 𝐓𝐡𝐞 𝐝𝐚𝐰𝐧 𝐰𝐡𝐢𝐜𝐡 𝐡𝐞𝐫𝐚𝐥𝐝𝐬 𝐭𝐨𝐦𝐨𝐫𝐫𝐨𝐰 𝐚𝐫𝐞 𝐝𝐲𝐞𝐢𝐧𝐠 𝐭𝐡𝐞 𝐰𝐨𝐫𝐥𝐝.
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「死って、夜みたいだよね」
ほとんどの人は死ぬ直前に、瞼を閉じるでしょう。真っ暗な世界に取り残されて、段々夜が更けていくみたいに、意識が遠のいていくなかで。二度と来ない夜明けを夢見て、祈るみたいに沈んでいくから。水底まで辿り着いてしまった、明けることのない深い夜みたい。
下ろした髪が終わりかけた冬の風に靡いて、ふと言葉が途切れる。迷うみたいな指先が、凍てつくような金網に絡む。吐き出した息は白く霞んで、夜闇に攫われていく。一枚の大きな布を宇宙の最果て色に染め上げて、この世界の全部を包み込んだみたいな空が、頭上に広がっている。
「死は経験出来ないものだ、みたいな話あったよね」
私が生きている間、死は決してやってこない。死が来てくれたときには、私はもうどこにもいない。どれだけ細かく死の瞬間を刻んだとしても、生きている人のところへは、死は存在しない。死んでしまった人は、その人自身がもはや存在していない。だから死は、どこにもないんだって。何でもないんだって。絶対に追い越せない、漸近線には重ならないものなんだって。
淡い三日月の光が降り注ぎ、涙みたいに頬を濡らした。不意に沈黙が落ちて、淡雪色の翼を纏った天使が通る。肌を刺すような冷気が染みて、今にもこの時間に終止符を打とうとする。銀色に煌めく月光を閉じ込めたみたいな、澄んだ空気でゆっくりと肺を満たし、緩やかに吐き出した。歩き疲れた爪先が痛かった。
「だから私の死は、私に関係ないことなのかもしれない。置いていかれる誰かにしか、関係ないことなのかもしれない。そんな話があるみたい」
それは違うんじゃないかなあ、なんだかちょっとズルいよね。“私の”って呼べるのに、横取りされちゃうような気分になる。逆に言えば、私もいろんな誰かの死を背負って生きてるってことだよね。それなら、納得出来ることなのかなあ。そうだ、死んだらどうなりたい? 幽霊みたいに、ふわふわ宙に浮いて旅に出たいかなあ。それとも、天国とかあの世みたいなところでのんびり暮らしたいかも。え、消えちゃうんじゃないのか、って? ふふ、それはそれ、これはこれだよ。そういえば、閻魔様っているのかなあ。ほんとに舌抜かれちゃうなら、痛そうだよね。あれ、おへそを取られるんだっけ?
ずっと遠くで、点々と並んだ街灯が瞬いている。星明かりよりもずっと眩しいその光は、まるで空に昇っていくのを待つ灯籠のようだった。名前も知らない誰かの影が、ふっと明かりの下を掠めて揺れる。まるで風に吹かれた幽霊のように。
「もしかしたら私、死んだことあるのかも……」
もしも昨日眠ったときに、いつの間にか人生が終わっちゃってて。ここにいる私は、精巧に作られたクローンなのかも。人格も記憶もそっくりそのまま引き継いだら、分かんないよね。もとの私の身体は海に捨てられて、魚の餌になってたとしても、気付けないんだもんね。考えるから私でいられるんだ〜って、昔の偉い人は言ったんだっけ。じゃあ考えるのをやめちゃえば、その瞬間は私じゃないのかも。夜の間もずっと起きて考え続けてないと、私じゃなくなるってことなのかなあ。今夜眠ったら、私はもう私じゃなくなってるのかも。そうだ、明日会ったときのために、今のうちに合言葉とか決めておこっか? あ、でもその記憶だって引き継がれちゃうのか……うーん、難しいね……
消え入りそうな吐息と一緒に、掠れた声が果てしなく広がる薄墨色の空に吸い込まれていく。耳鳴りがしそうな寒空の下、踏み出したい一歩がつんのめるように止まる。過ぎゆく季節に置いていかれた粉雪が、はらはらと手の甲に舞い落ちた。
「私も君も、明日にはクローンかもしれないけどさ。夜が明けたら、何しよっか。前に言ってた気になるジェラート屋さん、一緒に行ってみようよ。それから、カラオケと、ボウリングと、ゲームセンターと……そうだ、海を見に行こう。夕焼けに染まった橙色の海、きっと綺麗だよ。そういえばずっと前に、初日の出も見たいって言ってたよね。お正月は過ぎちゃったけど、今からでも間に合うよ。来年の予行練習、ってことで」
冷えきった指先が、微かに触れる。ぬるい液体が頬を伝って、灰色のコンクリートを染めた。遠くを見つめたままの視線が、寂しそうに揺れる。
「それから……それから、ね、どうしよう。なんて言えばいいのか、分かんなくなっちゃった」
涙に飲まれた声が嗚咽に変わって、乾いた夜風に流されていく。言葉にすれば簡単なたった五文字は、きっとどうしようもなく君を傷付けてしまうから。声が詰まって、悴んだ指に力を込めることさえ叶わなくて。金網で隔てられたその表情は、夜に遮られて読み取れなかった。二人きりの静寂の中で、秒針は進み続ける。無数の人々の夜を見下ろして、僅かな呼吸の音だけに耳を澄ます。最初に言ったこと、嘘だよ。夜は、死なんかじゃない。だってどれだけ深く沈んでも、必ず夜明けが迎えに来てくれるから。それはまるで、ひとりぼっちの誰かに手を差し伸べる、不器用な愛みたいに。
遥か彼方の東空が、微かに白み始める。終わりかけた夜を掬うように、私は震える唇を開いた。
『死なないで』
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𝐋𝐲𝐫𝐢𝐜𝐬*
⚖️頽廃的都市構想
浮ついた世のシーンでメロウに
🗝雑踏の中息衝いた
Trap ChiptuneとNeon アラカルト
🧊感傷的都市逍遥
フラついた夜のミームとメロディ
🫧彷徨って行き着いた路地裏の闇夜に溶ける
🍸本能的都市抗争
騒ついた銀のホールでファジーに
📓喧騒の中色褪せぬVaporwave
Makina エトセトラ
🕯️絶対的都市権能
ヘラついた今日のあいつをバターに
💍強がって噛み付いた 聳える都市のシステム
🕯️🍸純金製の欠乏感を左の耳にぶら下げて
📓🗝芳香性の憂鬱感を纏ったら
⚖️🫧抗菌性の停滞感を両手の爪に散りばめて
💍🧊どうせ何も起きることのないこの夜に
🌃朽ちゆく身体と心を連れ
一人当て無く漂っていくの
⚖️📓🕯️🍸形骸的残響に絆され滅びゆく都市を這い回るゾンビ
🌃どんなにどんなに夜に堕ちても
明日の光が世界を染めてく
蘇る私は 帝国少女
⚖️盲目的都市幻想
ひしめき合うスノッブと漂うクロエ
🫧私をちょっと狂わせるPUSHER
Wave Pablo エトセトラ
💍恋愛的都市様相
目眩く夜とジーンのシャワーに
🕯️直濡れた指の先でなぞる恋のシニカル
🍸金剛性の背徳感を薬の指に光らせて
📓伸縮性の優越感に袖を通して
🗝後天性の先入観で両目の淵を彩った
🧊違う人とあの部屋で夢を見るなら モウ
🌃私の身体と心を傷付けた罪を償いなさいよ
🫧💍🧊🗝衝動的感情に流されて行き着く先はクライクライ夜
🌃あんなにあんなに縛られたのは
あなたに愛して欲しかっただけ
泣き濡れる私は 啼哭少女
🕯️🧊もう遣る瀬無い浮かぬ日々も
🍸🗝揺れる摩天楼に抱かれて
⚖️📓ビルにまみえる夜空の星に
💍🫧願いを込める こんな夜に
🌃朽ちゆく身体と心を連れ
一人当て無く漂っていくの
📓🫧🕯️🗝形骸的残響に絆され滅びゆく都市を這い回るゾンビ
🌃どんなにどんなに夜に堕ちても
明日の光が世界を染めてく
⚖️💍🧊🍸未来ナドドウデモイイノヨ
🌃こんなにこんなに愛した場所よ
何度も何度も歩いた道よ
催涙的郷愁に襲われ
黄昏る街を駆け抜けるゾンビ
私の身体と心の傷 あなたの笑顔も声も全部
ココニ置イテ逝クワ
帝国少女
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𝐎𝐫𝐢𝐠𝐢𝐧𝐚𝐥*
帝国少女 / R Sound Design様
https://youtu.be/hUaVxNUCbc4?si=0PJvc8L6881QU8vF
𝐂𝐚𝐬𝐭*
⚖️和泉 優香 (cv.07)
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📓夕永 文乃 (cv.瑠莉)
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💍氷室 莉沙 (cv.りる)
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🫧望月 七星 (cv.小日向奏乃)
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🕯️夕永 紅羽 (cv.くろ)
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🧊流川 蒼依 (cv.朔)
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🍸水縹 詩希 (cv.おと*°)
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🗝天瀬 実琴 (cv.蓬)
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𝐌𝐢𝐱*
おと*°
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𝐓𝐚𝐠*
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