水星都市計画
Carpe Noctem☾⋆
水星都市計画
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𝟏𝟔 : 𝐄𝐚𝐜𝐡 𝐩𝐞𝐫𝐬𝐨𝐧 𝐢𝐬 𝐜𝐨𝐧𝐧𝐞𝐜𝐭𝐞𝐝 𝐰𝐢𝐭𝐡 𝐨𝐭𝐡𝐞𝐫𝐬, 𝐜𝐢𝐭𝐢𝐞𝐬, 𝐚𝐧𝐝 𝐬𝐭𝐚𝐫𝐬.
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手に抱えた本を隠すように、小学校高学年くらいの少女が小走りに傍を通りすぎていく。よほど急いでいたのだろうか、泥ひとつない真っ赤なスニーカーの紐が、半分解けかかっている。
「あぶな……」
咄嗟に発した声が言葉を結ぶ前に、べたん、と盛大な音がした。実琴の制止が届くより先に、解けた靴紐は踏んづけられてしまったらしい。紅葉のような小さな手が、ピカピカに磨かれた図書館の床に張り付いている。
「だ、大丈夫……?」
子供と話すのなんて何年ぶりだろう、決して得意ではないが、通りがかった手前無視も出来なくて。そう声をかければ、転んだ少女は恥ずかしそうに俯き、慌てたように散らばった本を拾い上げた。小中学生向けのポップな表紙に目を惹かれ、思わず彼女の手元を見つめてしまう。『これであなたも人気者!? 友達の作り方』。うわ、と声が漏れそうになったのを慌てて押し留めた。実琴の通っていた、小学校の図書室にも似たような本があった気がする。やたらと色数が多くて、目の大きい女の子が表紙を飾っているシリーズもの。女子力アップレッスンとか、おしゃれ女子のヒミツとか、そういうやつ。二十歳を超えてから目にすると、妙な居た堪れなさに襲われる。友達、いないのだろうか。実琴も、詩希と出会うまでは友達なんていなかったからな──いや、詩希のことを友達と呼んでいいのかはまだ微妙なところだが。なんて、そんな失礼な邪推をしながら少女の方を見やると、彼女は意を決したように口を開いた。
「あの! やっぱり、友達がいないと変だ、って思いますか……?」
予想もしなかった問いかけに、思わず口を噤む。その聞き方にはどこか違和感があった。友達の作り方、なんて本を借りようとしている割には、どこか懐疑的な──まるで、否定されたがっているような尋ね方だった。もしかして、心から友達が欲しいわけではないのだろうか。これまで意識的に思い出さないようにしていた、昔の記憶を掘り返す。無駄に声の大きなクラスの男子にしつこく揶揄われていた、地獄の小学校時代。二度と同じ思いをしたくなくて私立の女子校を受験したはいいものの、気品漂うお嬢様たちの雰囲気に上手く馴染めなかった中学高校時代。思い起こせば本当に、詩希以外に友人と呼べる存在はいなかったように思う。それでも実琴は、無理して友達を作ろうとしたことはなかった。リアルに友人が出来なくとも、ネット上には沢山の気の合う仲間がいたから。両親や教師からは、常に心配されていたような気もするけれど。友達はいる? みんなと仲良く出来てる? 困ってることはない? 今考えればそれは間違いなく優しさなのだけど、当時の実琴にとってはお節介以外の何ものでもなかった。周囲に馴染めなくとも、それで嫌な思いをしているわけではない。毎日をそれなりに楽しく過ごせているのに、大人たちはいつでも実琴が独りぼっちで困っているかのように扱っていた。もしかすると、目の前の彼女も同じなのだろうか。教室という小さな世界に馴染めていないのではないかと、心配する大人の声を窮屈に感じているのだろうか。
「別に、そんなことないと思うけど……私もそんな、友達とかいなかったし。その……なに? 出会えるときになったら、自然と出会えるようなもんじゃないの。心配しなくてもいいよ」
彼女のことを何も知らないのに、憶測で偉そうなことを言ってしまったかもしれない。口にした直後に後悔が芽生えて、リトライボタンを連打したくなる。それでも少女は、ほんの少し驚いたような顔をしたあと、安堵したようにはにかんだ。まるで、検算の結果が合っていたときみたいに。
「ありがとうございます!」
明るい表情のままで会釈をして、本を拾い上げた少女はさっきまで見ていた本棚の方へと戻っていった。別れ際に見えた、彼女の手にしたもう一冊の本に口元が綻ぶ。それは、中高生向けに書かれた宇宙物理学の入門書だった。高校一年生の秋、実琴が学部を決めたきっかけになった大好きな本。興味があるのだろうか、聞いてみればよかったな。そんなことを思うけれど、今更尋ねにいくのはなんだか気恥ずかしくて。あの本を開いた彼女が、かつての実琴が抱いた喜びを見出せますように。そんなことを心の中で願いながら、実琴は図書館を後にしたのだった。
『Hapiness』
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𝐋𝐲𝐫𝐢𝐜𝐬*
🧊冴えてる今日の運命線
🗝やはりツイてるガチャはSSR
🫧足取り軽くなるよ 1,2,step
📓空飛ぶ車達を追い越した
🧊またお決まりのカフェで定例会
🫧みんなと駄弁るだけでもういいかい
🗝「まぁ真面目な話は置いといて…」
📓またも宙に浮いてる都市計画
🫧🧊妄想・想像の範疇を少し現実にしたいのさ
📓簡単に笑わないで(🗝前衛的宇宙船に乗って)
🧊成層圏内 ビルの上 🫧イルミネーションを散りばめて
📓🗝満天の星を呼ぶよ
🌃透明にHi-Fi 青い流星が
今夜快晴 空を流れて
時はtic-tac 9時を刻んで
集え集え この指まで
飛ばせWi-Fi 青い惑星よ
僕の声が届いてますか?
迫るmidnight 心交わして
街も人も星も繋がっていく
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𝐎𝐫𝐢𝐠𝐢𝐧𝐚𝐥*
水星都市計画 / R Sound Design様
https://youtu.be/mm0yce8KJ5Y?si=1bu-DULmDh88zpQQ
𝐂𝐚𝐬𝐭*
📓夕永 文乃 (cv.瑠莉)
https://nana-music.com/users/6276530
🫧望月 七星 (cv.小日向奏乃)
https://nana-music.com/users/5171643
🧊流川 蒼依 (cv.朔)
https://nana-music.com/users/2793950
🗝天瀬 実琴 (cv.蓬)
https://nana-music.com/users/6551018
𝐓𝐚𝐠*
#Carpe_Noctem #Yuzの単発企画
#夕永文乃
#望月七星
#流川蒼依
#天瀬実琴
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