ルマ
幽霊同好会
ルマ
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#1-3 ×点喰らい尽くせ
#1「幽霊同好会へようこそ!」
第三話
. ✎ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21457928
※下記本編と同じ内容です
⚠️出血表現があります。
どたどた、ばたばた。
ふと、そんな騒がしい足音が廊下のほうからしたかと思えば、勢いよく引き戸が開けられる。開け放たれる。
反射的にそちらを見やると、そこには、少女が立っていた。
凝ったアレンジのされた暗い藍色の髪、明るい紫色の瞳。困ったように下がった眉と、どこか申し訳なさそうに少しだけ縮こまった身体、そして、後ろで組まれた手。
「はぅ……お、遅くなりましたぁ……」
そこにいたのは、亡果先輩だった──あ、いや、先輩呼びはダメなんだっけ?
「遅くなるも何も、来たいときに来る、でいいのよ、みあ」
「あ……そ、そうだったのです。ごめんなさい……」
「べつに、謝るほどのことでもないけれど……──って、その手、どうしたの?」
彼女が後ろにやっていた手が、謝罪と会釈をすると同時に前にやってきて、露わになった──赤色と共に。
その左手は、何かで刺して抉ったように、爛れて、血が滲んでいた。
「あ、えとっ、これは……はぅ……さっき、野良犬さんに、噛まれてしまって」
「わんわん? ゆめは、わんわんより、にゃーにゃーのほうがすきすきだよ! だってだって、たかぁ〜いところからぴゅーっしても、しゅたっ! で、かっこい〜いんだよ!」
「わ、わかります……! 猫さんは、カッコよくて、可愛いのです……!」
「犬猫談義は置いておいて……つまり、いつもの不幸ね?」
「はい……えへへへ」
「『えへへへ』じゃないですよ!」
三人のやりとりに我慢ならなくなり、思わず立ち上がって叫ぶ。怒鳴る。怒鳴りつける。
「先輩、怪我してるんですよ!? なに笑ってるんですか!」
滲んだ血液を見た瞬間から、血の気の引く感覚がおさまらない。
先輩は、怪我をしている。
それは、笑い話にしていいようなことじゃない。はず。
「あ、み、美月ちゃん……大丈夫、ですよ? こんなの、いつものことで……みあい、ドジなのです。だから、いつも不幸な目に遭って……このぐらい、慣れっこなのです」
「慣れっこだとしても、傷は傷です! 痛覚は変わりません! 痛いものは痛いでしょう!?」
部室が、しんと静まりかえる。
此処以外で何度も感じたことのある、嫌な空気。
幾度も味わった、よく知る沈黙。
つう、背中に冷や汗が伝って、ぞわりと、そしてひんやりとした。
……間違ったことを言った?
どうすればよかった? どうしなければよかった?
でも、でも……怪我を笑い飛ばすなんて、できない。
「……ありがとうございます、美月ちゃん。でも、ほんとうに大丈夫ですから……みあいは、未熟で可哀想なのです。だから、しょうがないのですよ」
「可哀想は大抵『かわいそう』って読むから、『みあい』って名前と掛けるには、やや違和感があるけどね。それじゃ『みあい』じゃなくて『みわい』じゃない」
不意にそんな声がして、少し驚く。
見れば──今来たのだろうか? 亡果先輩の後ろに、安栖魂先輩が立っていた。スクールバッグの持ち手を肩に上に乗せていて、少しガラが悪い。
口元をむすっとへの字にして、亡果先輩を見ているようで見ていない。いつも通り、不機嫌そうだ──いや、まだいつも通りと言えるほどの時間は過ごしていないから、印象通り、とでも言うべきか。
「……未熟で、可哀想で、しょうがなくても……怪我を放置していい理由には、ならないと思います。保健室行きますよ、先輩」
「え? み、美月ちゃっ……」
本人が大丈夫と言っているから、これはお節介なのかもしれない。
それでも──放っておくなんて、できなくて。
亡果先輩の、怪我をしてない右手を無理やり掴み、部室を出──
……あれ?
…………。
「……みっちゃん、もしかして……保健室がどっちか、ちんぷんかんぷん?」
「ふふっ……やっぱり、迷子さんね?」
「うっ……うるさいです! 高等部の校舎なんて来ないから、ちょっと思い出せないだけで……」
「……こっちよ」
くるり。
赤色のツインテールが揺れて、廊下を歩み出す。
「あっ……ありがとう、ございます」
慌てて礼を言いながら、こちらが見失わないようにかゆっくりしたスピードで進むツンデレ先輩を、ドジっ子先輩を連れて追いかけた。
◇◇◇
「これでよし……ですよ、ね?」
「ええ、大丈夫だと思うわ。消毒もしたし」
「はう……ありがとうございます、二人とも」
安栖魂先輩は、何故かやけに保健室に詳しかった。
なので、消毒液や包帯や絆創膏の位置を教えてもらいながら、亡果先輩を手当てした。
これだけ詳しいのなら、保健委員並みに詳しいのなら(ほんとうに保健委員かもしれないけれど)、安栖魂先輩がやったほうが効率が良いだろう、とはじめは考えた。
しかし、亡果先輩の傷を見た安栖魂先輩は、すごく痛々しい顔で、目を逸らしていて。
だから、自分がやったほうがいいと思った。それだけだ。
安栖魂先輩は無愛想で不機嫌そうだけれどど、ここまで連れてきてくれたし、色々と教えてくれたし、亡果先輩が心配なんだろうな、と思う。
…………。
「あの……えの先輩、あい先輩」
「「……?」」
勇気を振り絞って、呼んでみた。
自分なりの、距離の詰め方。
「部長から、先輩後輩意識するなって言われたんですけど、流石に完全に意識しないのは無理そう、なので……せめて、あだ名で呼ぼうと思ったん、ですけど。……変ですか?」
だった。
中学生からすれば、高校生は立派な先輩だ。
たった一つか二つか三つか程度しか変わらなくても、年功序列は古くさいと言われようとも、歳上は歳上として扱いたい。敬いたい。
だから、せめて……少しでも親近感をわかせるために、あだ名をつけてみた。幽咲先輩──めれ先輩の真似っこだ。
敬語はやめないし先輩だって付けるけど、これで少しは『先輩後輩を意識していない』ことになるんじゃないかな、って。広沒先輩──いあ先輩も、認めてくれるんじゃないか、って。
「……あ、えと……いいと、思いますよ……! みあいのこと、あいのほうで呼ぶ人いないので、びっくりしましたけど……可愛いのです!」
「……故台の好きにしたらいいと思うわよ? あたしも、幽咲はふえちゃんって呼ぶから、そっちかってびっくりしたけど、どう呼ばれてもいいし」
よ、よかった……。
二人とも肯定的で、心底安堵する。
じゃあ、いあ先輩とめれ先輩のことも、これからはそう呼んでみよう──そこまで考えて、自分がこれからも幽霊同好会に来る気であることに気がついて、思わず固まる。
無意識だったけれど、この場所に馴染もうとしている自分が、確かにいた。心地よさを感じている自分が、此処にいた。
……認めてくれる居場所だと決めるには、早すぎると思うのだけれど。
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. ✎ 歌詞
💊満点な人生も秀才な解答もございません
🍯有害な評論も見え透いた同情も聞きたくはないな
🍯壮観な表彰も平凡な真っ当もございません
🫐暗転な将来も傲慢な快晴も見たくはないな
💊はいはい 俯いちゃって
ヤンヤンヤン クラクラリ
🍯彷徨って
正答 失っちゃって わーんわーんわーん
🫐だって!心は満たされない!
🫐愛を頂戴
👻感情熱唱メッタッタッタ声枯らせ
💊全然わかんない ×点喰らい尽くせ
👻心臓血漿ラッタッタッタ踊り舞え
🍯正解なんてバイバイ提唱だダダダダ
👻ワオーン!
〖👻 部員紹介 👻〗
💊安栖魂 歩榎(cv.りる)
https://nana-music.com/users/5982525
高等部2年生。
素直になれない不器用さん。
🫐亡果 みあい(cv.あかりん)
https://nana-music.com/users/912797
高等部1年生。
臆病なドジっ子。
🍯故台 美月(cv.瑠莉)
https://nana-music.com/users/6276530
中等部3年生。
真面目なツッコミ役。
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