【1人声劇】帰省

読み手様：夜風ルイ　台本：noe

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 最後に顔を見せに行こうと言う 兄の誘いを断ると いいからいいから、って 兄が俺の手を引いて 母ちゃん、我が子と孫が来たぞ なんて、 まだ死のなんたるかもわかってないような 兄の子供と一緒に 集まってた親戚から 最後だから顔を見せてあげて なんて言われて つい見たらさ、こう、ブワーッて溢(あふ)れてきて なんでもっと帰らなかったんだろうとか まだ全然、親孝行出来てない、とか 後悔みたいなのが止まらなくなって 親父が亡くなってから、 とか考えたら親父の事まで憶(おも)い出して もうどうしようもないの あぁ、俺 親を亡くしたんだなってさ やっと実感して 心にぽっかり穴が空いたのを感じたんだよ 多忙(たぼう)を理由に正月くらいしか 顔見せない薄情者(はくじょうもの)だったのに いつも満面の笑みで 「おかえり」を言ってくれた人は もう、どこにもいないんだなって ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 小話 3人兄妹の真ん中で、仕事に追われる日々。 たまには帰っておいで、という母の誘いを「忙しいからまた今度」って断っていた。 父が亡くなってから、仕事が忙しくなって来たのを理由に、兄と妹に母の事は任せっきりになっている。 申し訳なさを感じながら帰路を急いでいると、たまにしか連絡を取っていなかった兄から、母の訃報を聞く。 久しぶりに帰省した我が家で、兄と妹が出迎えてくれたが、なんとも言えない違和感を感じる。 淡々と準備は進み、葬儀場。 泣かない自分を気遣ったのか、最後に顔を見せに行こうという兄に連れられ、棺の中の母に会いに行く。 眠ってるかのような母の顔を見ると、いろんな事が浮かんできて涙と後悔が止まらなくなる。 仲のいい家族の食卓。 父が笑い、母が笑い、兄が、妹が笑って、自分も笑ってて… 当たり前に受けていた幸せを、世界で一番自分のことを想ってくれていた人を、 親を亡くしたのだと、その時改めて実感する。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ #声劇 #声劇台本 #台本 #一人声劇 #1人声劇 #声劇 #コラボ歓迎 #死別 #家族 #朗読 #切ない