シャル・ウィ・ダンス
🏛マリオン·🖼イライザ
シャル・ウィ・ダンス
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第4節「不死の妙薬と死の魔女」
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幼いフレイの記憶に残る「我が家」は、村から外れた森の中にある小さな小屋だ。裕福な暮らしではなかったけれど、森で獣を狩りながらの生活はフレイアと質素に生きていくには十分だった。
「私の分も食べていいわよ」
「えっ!?ほとんど食べてないじゃないか」
「お姉ちゃんお腹いっぱいだからいいの」
姉はまだ子供から抜けきらない歳だったが、それでもフレイをよく子供扱いした。
たった5歳、されど子供の5歳は大きい。しかもフレイアは魔女なので魔法を使うことも出来る。フレイは自分の非力さが常に歯がゆかった。
「そうだ!今日狐を捕まえたんだ!毛皮は村に売りに行くよ。そしたらフレイアが好きそうなお菓子を買ってくるから!」
「まぁ、すごいわね!フレイは父さんに似て腕の良い猟師になりそうね」
やっと剣や弓の扱いにも慣れてきたフレイは、これで姉を助けられるようになれると意気込んでいた。けれど本当はまだ世間知らずの子供でしかなかった。
「……あまり村には行かない方がいいと思うけど」
だから、そう言って不安そうに微笑むフレイアの気持ちにも気付くことが出来なかったのだ。
次の日、フレイは森で仕留めたウサギを片手に家へと急いでいた。今日はごちそうだ。フレイアも喜ぶだろうと思うと足取りは軽くなる。
しかし、家に近づくにつれていつもは静かな森に怒号響いていることに気が付いた。慌てて走り始めたフレイの目に飛び込んできたのは、大勢の男たちに美しい稲穂色の髪を掴まれて家から引きずり出されようとしているフレイアの姿だった。
「お、お前らッ!フレイアに何するんだ!」
「何だこのガキ……お前、魔女の弟か!?」
大勢の男たちに殺気立った目で睨まれ、フレイは思わず足がすくむ。まだ子供のフレイにとって大勢の大人に囲まれるのは恐怖でしか無かった。
「村の子どもが行方不明になったんだ。この魔女がさらったにちがいねぇ」
「そ、そんなことしてないわ……」
「嘘つくな!俺の息子を返せ!忌々しい魔女が!」
男のうちの1人が激昂して武器として持っていた鉈を振り上げる。咄嗟にフレイアに覆いかぶさったのは反射でしかなかった。
「フレイ!」
フレイアの悲鳴とともに背中が火傷したかのように熱くなった。痛みで目の前がちかちか点滅する。
「≪移動(トランスポート)≫!」
フレイアがフレイを抱えてそう唱えると、いつの間にか2人は森の外れの洞窟に座り込んでいた。逃げられたことに安堵しつつも、フレイはもう目を開けることもできない状態だった。そんなフレイの頬に何がの雫がぽたぽたとこぼれ落ちる。
「フレイ……フレイ、死なないで……私のせいで父さんも母さんも村に居られなくなったのに……あなたまで失ったらどうしたらいいの……?大丈夫、大丈夫よ。お姉ちゃんが必ず守るから……」
そしてフレイアが何かを呟くと──
「……え?」
フレイの痛みはすっかり消えていた。そして、目の前には血まみれの『自分』が横たわっていた。
「……フレイア!これ、何をしたんだよ!」
「命を……生き返らせるのは……出来ないこと。でも魂と肉体を入れ替えるなら……出来るかと思ったの。ふふふ、成……功……したわ、ね……」
「そんなの……そんなの、ダメだ!フレイア……」
フレイの感情の高まりとともに、コップからこぼれる水のように体から魔力が溢れ出していく。魔女ではないフレイに魔力のコントロールなど無理な話だ。
そして、魔力の使いすぎで気を失ったフレイが目覚めた時には、もうフレイアの魂は人形に閉じ込められていたのだった。
☪︎
「興味深いね。魂を入れ替える魔法と繋ぎ止める魔法がふたつかけられているのかな?」
「……さぁね、僕も無我夢中だったからどう魔法を使ったかなんて覚えてない」
「ふむ。でも、そんな風に手元に置いておきたい魂があるなら君も僕の気持ちが分かるんじゃないかな?僕たちに協力すればその人形の魂も生き返らせることも不可能では無くなるかもしれないよ」
「フレイアが……生き返る……」
そう言ってフレイはマリオンが差し出した手を呆然と見つめ返した。そして、その手へと腕を伸ばし……
「お前なんかと一緒にするな!」
「……チッ、残念だよ」
剣を振るったが、その切先はマリオンに当たることはなく空を切った。
「君がこちら側についてくれたら、あの死の魔女も僕らの言うことを聞いてくれるかもしれないと思ったんだけれどね……」
「へカティアにそんなことさせるわけないだろ!」
「なら、君を殺した後であの子を捕まえよう」
マリオンは冷たく微笑むと、氷で刃を作り次々にフレイに投げつけていく。フレイはその氷を走り転がりながら避け、合間を縫っては反撃を仕掛ける。
「ふふふ、中々身軽だね。でも逃げ回ってばかりじゃ勝てないよ?体力がいつまで持つかな?」
「そんなこと言ってられるのも今のうちだぞ!」
「何を…………ッ!?」
それまで余裕の笑みを浮かべていた、マリオンの顔が歪んで、足をもつれさせてバランスを崩す。慌てて足元を見ればロープで生えている草をくくり輪っか状にした物に足をとられていた。
「父さん直伝の狩り用簡易罠だ!」
その隙を見逃さず、フレイは件を振りかぶった。マリオンの杖であるナイフが弾き飛ばされ、真っ白な雪の上に赤い血が飛び散る。マリオンは脇腹を抑えて身をかわす。
「ぐっ……魔女のくせに……こんな手を使うなんて」
「っ、一撃で仕留め損ねたか……!」
「はぁ、はぁ、お前、ふざけるな……ふざけるなよ!僕はなぁ!イライザと一緒になって幸せになるんだ……それをこんな……イライザ……僕を助けろ!」
「はいっ、マリオン様」
マリオンの命令にいつものように微笑んで答えるイライザがナイフを拾い上げてマリオンへと走り寄る。だがここで杖を取り返されたらフレイに勝ち目は無い。
「くそっ……!」
慌てて走りよるフレイだったが、それよりも先にイライザはマリオンの元にたどり着くと──
「……は!?」
「……ぐっ……あ……イ、ライザ……!?」
そのナイフでマリオンの首を切り裂いた。
「……な、なぜ……」
「マリオン様の『イライザ』はイライザではありませんよね?マリオン様の幸せはイライザではないとイライザは分かってます」
「そん……な……イラ……イザ……僕の……イライザは」
マリオンは聞きたくないとばかりに首を振り、地面に崩れ落ちる。イライザはそんなマリオンの背中を支えてそっと抱き起こす。
「マリオン様の幸せはどこにもありません。だからイライザのできる『助け』はこれしかありません」
「……どこ……にも、ない……」
「もうお休みにしましょう。マリオン様」
そしてイライザは血に濡れたマリオンのくちびるに優しくキスを落とす。
「おやすみなさい」
その言葉にマリオンは子どものようにあどけなく目を瞬かせるとゆっくりと瞼を閉じた。そしてしばらくするとイライザも壊れた人形のようにぐたりと地面へと崩れ落ちたのだった。
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🏛マリオン・ヴィリエ(cv.はいねこ)
🖼イライザ(cv.小花衣 栞)
🖼悲しみは笑いましょう
生きるってマリオネット
🏛心臓がスイングしたら
珈琲はいかが?
🏛🖼1(アン)、2(ドゥ)、2(ドゥ)
1(アン)、2(ドゥ)、2(ドゥ)
1(アン)、2(ドゥ)、2(ドゥ)、3(トロワ)
🖼私うまく踊れないわ
🏛痛みも恨みも悲しみも
🏛混ぜて 🖼 (混ぜて)
🏛こねて 🖼(こねて)
🏛🖼おやすみのキス
🏛🖼shall we dance? 踊りましょう
🏛絶望 欲望 this is the life
🏛🖼shadow life! 余計なこと
🖼考えないでひとつになりましょう
🏛いいな 🖼(いいな)
🏛いいな 🖼(いいな)
🖼人間って人間って いいな
🏛🖼ラン ランラン ラン ララ ラン
ラン ランラン ラン ララ ラン
🖼ラララン
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☾第3章 プレイリスト☽
https://nana-music.com/playlists/4044295
☾ 素敵な伴奏ありがとうございました☽
蛍様
https://nana-music.com/sounds/066fa754
☾ 𝕋𝕒𝕘 ☽
#Reona #シャドーハウス2期 #アニメ
#魔女マリオン #イライザ_Harmosphere
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