灯火
The Epic of Harmosphere 第3章
灯火
- 30
- 7
- 0
第4節「不死の妙薬と死の魔女」
⟡.·*.·····························································⟡.·*.
プレイに全てを語り終えたマリオンは晴れやかな笑顔のままでこう続けた。
「このイライザには肉体しか残っていないが、いつか不死の妙薬を完成させたら僕は完璧なイライザを取り戻すんだ。そして2人で永遠に幸せに暮らすのさ」
「お、お前……お前、狂ってるよ……!」
「狂っている?」
マリオンはきょとんとした顔で答える。
「君だって同じじゃないか」
「僕が……同じ?」
「その人形……フレイアと呼んでいたね?その人形はただの人形じゃない。君とは別の魔力を感じる」
その言葉にフレイはびくりと方を震わせると、人形を守るようにぎゅっと抱き締めた。そんなフレイの様子を見てマリオンは笑みを深めた。
「何者かの魂を人形に入れて大事に持ち歩いている。それなら君が死の魔女を訪ねた理由も明白だ──君にも蘇らせたい大切な人がいるんだ。そうだろ?」
☪︎
一方その頃、へカティアは王都へと辿り着いていた。
しかしよく考えてみたら、それだけではなく一刻も早く女王に会わなくてはならない。へカティアは王宮の入口で2人の兵士に行く手を阻まれ、どうしたものかと内心でため息をついた。
「待て!何者だ!」
「ここは嬢ちゃんのような子どもは入れないぞ?」
威圧感のある大柄な男と神経質で疑い深そうな男。
頭の中を回転させる。そういえば女王に面会するための絶好の理由があったとそこで気が付き、へカティアは落ち着いて見えるようにゆっくりと口を開いた。
「私は「沈黙の森」から来た魔女へカティア。それとも死の魔女と名乗った方が良い?そちらから呼び付けておいて随分な歓迎ね」
なるべく居丈高に、そして不気味に。年相応に見られないように冷めた目で兵士たちを睨みつける。
大丈夫……大丈夫だ。何年も村人たち相手にやってきたことなのだから、とへカティアは暴れる心臓を抑えるように自分に言い聞かせる。
「何だこのガキ……ただの子供かと思ったが……」
「死の魔女?王佐殿が探しているとか言ってたな」
「いや、でも……本物か?」
大柄な男は単純なのかあっさり信じたが、もう1人はまだ疑いの目をへカティアに向けてきた。
「では、死の予言を与えよう。答えよ『死者の書』」
へカティアは手元の本を開く。師匠とへカティアの2人で繰り返し記録を書き込み、考察を書き加えたボロボロの本は何も知らない者が見ればさぞおどろおどろしい代物に見えるだろう。
「お前は内臓を悪くする未来が見える。最近体が重いでしょう?酒を控えなければ数年のうちに死ぬ」
「は、はぁ!?何で俺が酒飲みって知ってるんだ?」
どうやら心当たりがあるらしい大柄な男は怯えたような表情を浮かべた。
その顔には所々細かな血管が浮き出ており、顔色もやや黄色がかっている。血を浄化する内臓が弱っている症状だ。へカティアはそれを予測したに過ぎない。
「お前はすぐに医者にかからなければ、近いうちに病で死ぬだろう。女遊びもほどほどにするべきね」
「ヒィィ!?」
神経質そうな男の方は恐怖から言葉を失っている。
男の手に出ている出来物は売春宿などで感染しやすい病の初期症状だ。しかし早めに医者にかかれば死ぬことはないだろう。
「どう?信用した?」
「は、はい!魔女様!」
「失礼しました!こちらへどうぞ!」
☪︎
連れてこられたのは広いけれども王宮とは思えぬほど質素な部屋だった。部屋の中央に置かれた寝台はシンプルでありながら、北の国の職人たちの技術が遺憾無く発揮され緻密な細工が施されている。寝台には天蓋が付けられており、中は見ることができないがそこに眠る人物は恐らく高い位にある人物……女王だろう。
「あぁ、高名なる沈黙の森の死の魔女様。貴女の来訪に感謝致します!」
その寝台のそばに立つのは赤毛の美しい女性。
きっと王佐を務める魔女リリスだろうとへカティアは予測をつけた。
「死の魔女様、貴女は死の運命を変えることが出来ると聞きました。どうか我が王の死期を遠ざけて頂くことはできませんか?10年とは言いません、せめて5年……いえ、1年でもいいのです」
「……その件なんですが」
悲痛な訴えはへカティアの胸を締め付けたが、ひとまずはアダラとマリオンの暴挙を知らせねばならない。
「王女陛下の薬を作るために王宮に雇われた魔女についてお話があります」
「王宮に雇われた魔女……あぁ、アダラとマリオンのことですね?」
「はい。その2人が不死の妙薬を作るためのと称して近隣の村を襲って虐殺を繰り返しています。なのでリリス様、あの二人を……」
そこでへカティアは違和感を感じた。
リリスの表情に変化が無い。へカティアが告げたことに対する恐怖も、憤りも、悲しみも。その表情はまるでこの子は何を言っているのだろうといった風情で。
「アダラが言っていた材料の事ですか?」
「材料……?」
「赤子が50人も犠牲になるなんて……たしかに痛ましいことです」
悲しげに目を伏せるリリス。けれど、へカティアの中で違和感はどんどん膨らんで今にもはち切れそうだ。へカティアは震える足で少しずつリリスから後退る。
「でも……必要な犠牲でしょう?」
「ひ、必要な……犠牲……って……」
「賢王たる我が王が不死となれば、この国で飢えや戦争で亡くなる国民はぐっと減るでしょう。50人の犠牲で1000人が助かるなら仕方の無いこと」
へカティアの背中が寝台の柱にぶつかる。そして、そのままへカティアは天蓋の幕に足を取られて、寝台の中へと転んでしまった。
「……ッ!?」
へカティアは初めはそれを死体だと思った。
手足が枯れ木のように痩せ細り、肌も紙のようにかさつき色あせているミイラのような老女。しかしよく見ればその胸は微かに上下している。
生きている──いや、こんな状態になっても生かされ続けている。この老女は。
「あぁ、死の魔女様……!大丈夫ですか?ご紹介しましょう。こちらこそ敬愛すべき偉大なる我が王、女王カーチャ様です」
⟡.·*.·····························································⟡.·*.
💀ヘカティア・ヌーメニア(cv.唄見つきの)
🪆フレイ・テレシアス(cv.うにの子)
🌌シリウス・スクローイ(cv.琉伊)
🌠ポラリス・スクローイ(cv.琉伊)
🐍アダラ・バートリ(cv.RAKKO)
🏛マリオン・ヴィリエ(cv.はいねこ)
🖼イライザ(cv.小花衣 栞)
🌌🐍木漏れ日揺れる影に
あなたを思い出して
🏛🖼声が聞こえるような
ぬくもりに抱かれ
All:どこへも行かないで
この愛の海に浮かび
💀夜明けのような
あなたのそばにいたい
All:溢れていく 涙はそのままに
明日の夢 あなたに照らされて
🪆輝いていく
⟡.·*.·····························································⟡.·*.
☾第3章 プレイリスト☽
https://nana-music.com/playlists/4044295
☾ 素敵な伴奏ありがとうございました☽
たかどう様
https://nana-music.com/sounds/064675ee
☾ 𝕋𝕒𝕘 ☽
#灯火 #優河 #妻小学生になる #DTM #アコギ
#魔女ヘカティア #魔女フレイ #魔女シリウス #ポラリス_Harmosphere #魔女アダラ #魔女マリオン #イライザ_Harmosphere
Comment
No Comments Yet.