【陰陽寮編.前編...最終話】火葬曲
No.D / 作詞:UeNo.D
【陰陽寮編.前編...最終話】火葬曲
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「地獄の釜の蓋として、ここに在り続けなさい」
奏は元々、初代陰陽寮統括長の式神であった
当時、彼に対して自分がどう思っていたのかは覚えてないが、この言葉だけは忘れた事など1度もなかった
「奏は黄泉比良坂の番人
ここ、あの世とこの世の境目で人の世を守るもの」
そうして日々、言いつけ通り屋敷と同化し、この地を守ってきた
封印が弱まっている
このままでは地獄の釜の蓋があく
先月の騒動で封印が一気に弱まった事を感じた奏は、新たな神木の桜と協力し、屋敷の奥深くで祈りを捧げていた
誰もたどり着けない、奥深く、地獄へ続く扉の前で
「お願い…出てこないで」
小さくつぶやく
扉は軋み、今にも破られそうだ
「お願い…っ」
「っーーーーーーーーーあぁあああああ!!!」
願い虚しく、扉は破られた
扉の前にいた彼女を突き飛ばし、外へ外への列をなすのは地獄の亡者ども
「だめ!行かないで!
ここはあなたたちのいていい所じゃないの!」
そこに地獄の底でたゆたっていた妖も加わり、まさに百鬼夜行の体を成す
必死に食い止めようとする彼女を押しのけ、外へ外へと先陣をきるのは大輪に火をまとった妖『火車』である
火車の操る火に焼かれ、煙に巻かれながらも彼女はおし戻そうと祈りをやめない
次第に火は屋敷に燃え移り、彼女を責め苛む
だが…
必死の祈りのおかげか、徐々に門は閉まりはじめた
「このまま…どうか、しまってっ」
火車は彼女を嘲笑うかのように屋根を突き破り、死者に外界への道を作る
そしてどこかへ行ってしまった
扉を閉じる事に集中している彼女には見送ることしか出来ず、悔しくて歯噛みする
それでも彼女は必死に扉を閉めるために祈りを捧げた
やがて、静かに扉は閉じたが…
彼女が扉を閉じきったのは、屋敷に火が回りきった頃であった
「もう…動けないや
皆、無事かなぁ…けっほ…ごほっ」
倒れ付した彼女が夢想するのは幸せな走馬灯
長い間、生きてく中で手遊びにはじめたつくも神達との戯れは存外心地のいいものだった
みんなのおうた…も、いちど…聞きたかった…な
私も…もういちどうたいたk…
ーーーーーーーーーーーーーーーー後編へ続く
奏(カナデ)
CV.エリ
https://nana-music.com/users/10355887
イラスト
紅狼&蒲鼓
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