あんずの花
すりぃ
あんずの花
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💐あんずの花
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春に花を咲かせ、夏に実を結び、そして秋には──。
ここは、色づき始めた紅葉と銀杏が立ち並ぶ森の麓。幼い稲を連れて散歩に出ていた金木犀・百合・菊の三人は、鮮やかな秋の装いに揃って感嘆の息を吐いた。
「夏の暑さもすっかり落ち着いて、過ごしやすくなったわねえ」
「ああ、本当に」
「目にも優しい季節になったよね。……あれ?」
談笑のさなか、稲の動きを目で追っていた菊が、とある木を凝視したまま驚いたように呟いた。
「あんずの花……?」
「あら、春に咲く花のはずなのに、どうしてかしら」
「ここだけ、ちがうおはなでしゅー」
木の幹の周辺をぐるぐると回りながら、稲も不思議そうに首を傾げている。と、三人の様子を後ろから眺めていた金木犀が、意味ありげに微笑んでスッと前に進み出た。
「春に咲く花が、枯れずにいる理由。それはね、魔法がかかっているからさ」
「まほうでしゅか?」
「ああ。ひとつ昔話をしようか」
金木犀は木の幹に体を委ねて、謡うように語り始めた。
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その昔……とは言っても、たった五十年ほど前ではあるけれど。この森の近くには小さな村があってね。あんずと言う名の病気がちな女の子が住んでいたんだ。彼女はすぐ風邪をひいてしまうから、満足に学校にも通えず、いつも一人だった。いつも一人で、この木の下で遊んでいた。
そんなある日のこと。あんずは同い歳くらいの不思議な少女に出会った。少女は大袈裟な身振り手振りで女優のようにお辞儀をすると、あんずと友達になりたいと言った。ずっと一人で寂しかった彼女は、笑顔で少女の手を取った。
それからは楽しい日々だったよ。かくれんぼに鬼ごっこにあやとりに人形遊び……日が暮れるまで、何度も何度も。本当に楽しかった。
でも、幸福な時間は長くは続かなかった。冬が近づくにつれて、あんずの身体は日に日に衰弱していった。そして春を迎える前に、亡くなってしまったんだ。しかも驚いたことに、あんずが亡くなった翌日、彼女の死体はまるで雪が溶けるかのように何処かへ消えた。
残された少女は酷く悲しんで、この木の下で願った。彼女の魂がどうか幸せで満たされますように。彼女と同じ名を持つこの花が、いつまでも枯れませんようにと。
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「どう?ロマンチックだろう」
「悲しいお話……だけど、本当に願いは叶ったんだもんね。二人の気持ちは繋がってるはずだよ」
木の幹に手を置いて、菊は自信に言い聞かせるように呟いた。稲はまだ、話の意味がよく分かっていないようだったが、菊と同じように幹に手を当てて真剣な表情をしていた。そんな中、百合だけが、険しい目で金木犀を見つめていた。
麓からの帰り道。先立って歩く菊と稲を眺めながら、百合はそっと金木犀に話しかけた。
「それで、あの子の死体は今何処にあるのかしら」
「ん?何の話かな?」
「とぼけないで頂戴。あれ、あなたの話よね。私、記憶に覚えがあるもの。あなたがとても沈んでいた時のこと」
やや強まった口調で百合が問いつめる。しかし、金木犀はのらりくらりと微笑むばかり。
「そう言えば、人間の考えた話にこのようなものがあるよね。『美しき桜の樹の下には、屍体が埋まっている』」
口元を静かに引き上げて、金木犀は元来た道を振り返る。
「綺麗だろう?」
「……」
百合は何も言わないまま、固く口を結んであんずの木を見つめた。白く可憐なそれは、確かに魔法のように美しく、けれど同時に空恐ろしかった。
金木犀の抱えた情は、自身と正造の間に流れた物によく似ている。恐らく、だからこそ金木犀は百合だけに仄めかしたのだ。君なら分かってくれる、秘匿してくれると信じて。
ならば、私はその信頼に答えましょう。百合は心の中でそっと呟くと、金木犀の手を取って歩みを進める。きっと彼女はこの先も、木々を狂わせあの花を咲かせ続けるに違い無いけれど。同じ思いを抱えた百合だけは、その禁忌を許してあげたかった。
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🌾いねたん、おねーたんたちのおはなし、よくわかんなかったでしゅー。
🦄また小難しいこと言ってたんじゃないの? 年上の子達って皆頭良く見えるもの。あ、梅は別だけど。
❤️えぇ〜!ひどっ!……ふふん、お子様には分からないだろうけど、私たち年長組は、酸いも甘いも経験しつくしてますから!
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🌺🍵枯れない花の褪せない愛を
🌸🏵胸に閉じ込めたくて触れる
💍🪁悲しみの雨悪いのは誰
🏹🔑綴る想い、あんずの花へ。
🩰💗愛する感情が
わからないんだね
🍁🌾悴む肌は温もり求めて
赤くなる
🌱⛄️寂しい感情が
わからないんだね
🫧🦋ぶつけた肌は優しさ求めて
青くなる
❤️「好きだけれど仕方ないよ」
🍑その言葉の裏にあるもの
🌻あなたの為あたし傷ついて
🦄汚れるのが怖いのよ
💐枯れない花の褪せない愛を
胸に閉じ込めたくて触れる
🔑悲しみの雨悪いのは誰
綴る想い、あんずの花へ。
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❤️梅‐ume‐(CV:日向ひなの)
🌺椿‐tsubaki‐(CV:@あん子)
🍑桃‐momo‐(CV:蓬)
🌸桜‐sakura‐(CV:猫小町たまこ)
💍藤‐fuji‐(CV:おと*°)
🪁紫陽花‐ajisai‐(CV:桐生りな)
🏹百合‐yuri‐(CV:琉伊)
🌻向日葵‐himawari‐(CV:RAKKO)
🏵秋桜‐cosmos‐(CV:唄見つきの)
🔑金木犀‐kinmokusei‐(CV:すずめ)
🍵菊‐kiku‐(CV:はいねこ)
🦄柊‐hiiragi‐(CV:ゆうひ)
🩰蕾‐tsubomi‐(CV:瑠莉)
💗咲‐saki‐(CV:ゆるは)
🫧葵‐aoi‐(CV:翡横)
🦋蘭‐ran‐(CV:海咲)
🍁椛‐momiji‐(CV:月瀬ひるく)
🌾稲‐ine‐(CV:らいち🌷)
🌱芽‐mei‐ (CV:香流 紫月)
⛄️霙‐mizore‐(CV:白水)
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#謡う季節と花姉妹
#甘味屋花音のおしながき
#すりぃ
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