White Landscape
Orangestar
White Landscape
- 22
- 10
- 0
3箇所目「人形」📂file:7
🤍White Landscape
翌日の午後、仕事を終えた俺が骨董品店に寄ると、彼は昨夜とは打って変わって落ち着き払った表情で店の奥に座っていた。
「貴方は、昨日の」
「約束通りお邪魔するよ」
そう言って店の中に足を踏み入れた俺は、そこではたと歩みを止めた。入ってすぐのところにあるガラス張りのショーケースの中に、何とも美しい姿形をした人形が三体並べられていたのだ。
「これは……随分と値打ちのありそうなものだな。ひとつ見せてもらっても良いか?」
姪にあげたら喜びそうだ。そんなことを思いながら、俺は嬉々としてショーケースを指さした。だが、彼はすまなそうに眉根を下げると、緩やかに首を振った。
「いや、それは売り物じゃないんだ。私が拵えた大切なものでね」
「へぇ!この人形あんたが作ったのか?」
ガラスの外から見ていても分かる、まるで本物の人間のような質感に、俺は思わず大きな声を上げてしまった。彼は、俺の反応が嬉しかったのか、僅かに目尻を下げると小さく息を吐いた。
「そちらが本業なんだ。人形技師をやっている。……だが、それだけではなかなか食えなくてね。父の骨董品店も継いで、二足のわらじと言うわけだ」
彼はそのまま自嘲気味に目を伏せる。
「もっとも、養うものが居なくなってしまった今では、必死に働かずとも良くなってしまったがね」
事故死した妻と子どもたちの事を思っているのだろう。俺は、何とも言えない感情を飲み込めないまま、その日は早々に店を後にした。
出してもらった紅茶の味も、気を使っていたからか良く分からなかったが、彼が心根の優しい人物であることは分かった。いつか彼が、本心から笑える日が来れば良いと、強く願った。
それから俺は、月に何度か彼の店に足を運ぶ常連になった。人形たちはいつの間にかショーケースから姿を消していたが、そのことについて彼が俺に何かを報告してくることは無かった。俺も、踏み込んでは無粋だろうと、気になってはいたものの、人形たちの行方については一度も口にしなかった。
そして数年が経ったある日、俺は海外へ異動する事になり、店へ足を運ぶ機会もすっかり無くなってしまった。再び祖国へ戻ってきたのは、最後に店へ立ち寄ってから五年後のこと。何となしに通りへ寄ってみると、あの店は健在だった。途端に昔の記憶がまざまざと蘇ってくる。俺は、思わず駆け足になって、勢いよく店の扉を開いた。
🌈霽れを待つへ続く
𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪
〖観測者〗
🥀おと*°
https://nana-music.com/users/8312441
💗はいねこ
https://nana-music.com/users/7300293
🍡蓬
https://nana-music.com/users/6551018
🌻日向ひなの
https://nana-music.com/users/2284271
𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪
🥀なら塗り潰してしまえよ
世界も君も全部
🌻感情なんてもういらないのに
💗息をしたくないなら
しなければいいなんて
🍡自分勝手なんだ君も僕も
🌻空が青くないから
心を噤んだって
💗君は僕を忘れるだけだろう
🍡全て終わりにしたいんだ
もう消え去ればいいなんて
🥀望んだはずの景色にまた
🤍君を描くのさ
🤍救えないな
𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪 𓆩꙳𓆪 𓆩⋆𓆪
#Orangestar #White_Landscape #SEASIDE_SOLILOQUIES #SEASIDESOLILOQUIES
#全くこれだから夏は
Comment
No Comments Yet.