#星詠みの詩
【キャンサー】
ジェミニの独り言が、日に日に増えている気がする。「もう~」とか「私の馬鹿!」みたいな、うっかり出てしまうような独り言じゃなくて、まるで目に見えない誰かと会話をしているような口調なのが、とても気になる。
「それじゃあつまり、現在世界の均衡が保てていないのは、星詠みに原因があるってこと?……ふぅん……じゃあポルックスたちや私たちの中に悪者がいるってことなのかな?私はそうは思わないけど」
「あ、あの、ジェミニ」
「あ、はは……困ったなぁ」
こんな調子で、僕の言葉が彼女に届かないことも増えたような気がする。
ポルックスも、いつも苦しそうな表情で任務に当たってる。他の星詠みたちも色々と不調が出てるみたいだけど、僕は体調を大きく崩すこともなく、淡々と日々の任務をこなしていった。そうしている間にも、ジェミニの独り言は日ごとに増えていく。……これはきっと、何かがおかしい。そう思った僕は、ポルックスに心の内を明かした。
「ねぇ、ポルックス……僕たちに、何か隠し事してる?」
おそるおそる尋ねると、ポルックスははっと目を見開いた。それを見て、僕は自分の愚かさに気付く。
これは、心が傷ついた時の表情だ。
「そのようなこと、するはずがないだろう」
ポルックスの返答は、それだけだった。
僕はポルックスを疑うようなことをしてしまった申し訳なさで胸がいっぱいになった。
そうだよね、仲間を疑っちゃだめだよね。
以前、ポルックスは僕に「星詠み同士の結びつきを高める力がある」って言ってた。
それって、どういう意味なんだろう。僕にできることって何だろう?
今でも、その答えは出ていないんだけど。
ふとした瞬間に思い出すんだ。僕が人間だった頃、人に頼まれた仕事をこなすことが得意で「ありがとう」ってたくさん言ってもらえたこと。もしかして、誰かの願いを叶えたり、困ってる人を助けたりすることが、僕の役目なのかな。
そういえば、アリエスがなにか悩んでるみたい。僕に解決できるかな。力になれるといいんだけれど……。
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