悔やむと書いてミライ
ネガティブマジカルガールズ
悔やむと書いてミライ
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第4話「暗転」
『ネームレスが出たよ、早く集まってね』
そんなそっけないメッセージを目を通してあさひは軽くため息をついた。
最近あさひたちの魔法が効かない強いネームレスが増えてきている。5人で力を合わせれば倒せないこともないのだが、全員が疲弊しているのは確かだ。
(どうして急にネームレスが強くなったの……?)
あさひの脳裏にふとそんな考えが思い浮かぶ。きらりたちが言うには、少しづつネームレスは強くなっていたという。けれど、あさひがネームレスが強くなっていると実感したのは最近のことだ。
(何かしら……この違和感……)
些細な違いが、悪い予感が、あさひの脳をちくちくと刺してくる。けれどあさひはゆっくりと頭を振るとそんな感情を追い出した。
(まずは目の前のネームレスに集中しないと……)
×××××
「今日倒して欲しいのは『執着のネームレス』だ。今回は早めに発見できたからあまり成長していない。だから迅速に倒して貰えると助かるよ」
いつも通り、黒髪の少女の体を拝借しているリトルリトルは歪な笑顔のままそう告げる。
目の前には手が何本も生えているマネキンのようなネームレスがいる。中心には小さな人形のようなものを抱えており、そこから常に腐臭のするねばねばとした紫色の粘液が滴っていた。
「皆、行くわよ」
あさひの言葉と共に5人は飛び出した。
最近の戦い方のセオリー通り、まずはきらりがリボンでネームレスを拘束する。──はずだった。
「っ……!?リボンが出せない……!」
「きらりん!……ううっ!」
慌てたようにきらりが叫ぶ。そしてそのままきらりの体は落下していく。いつものように魔法少女の常人離れした跳躍力が発揮できていないようだ。
あいらが慌ててきらりを追いかけ、勢いを殺しながら受け止めたが、衝撃に耐えきれなかったのか2人とももつれるように地面に転がった。
「きらり!あいら!危ないっ!」
ネームレスの腕が2人を捕まえようと伸びるが、うららがその間に割って入り腕を切り落とし、そのまま他の腕や頭も一気に切り落とす。ほのかの「重力」のサポートを受けた斬撃は戦闘を重ねて息ぴったりだ。
しかし、切り落とされた断面を見てほのかが告げる。
「な、中身は……空っぽです……!」
「切り落とされても効いていないようね」
ネームレスの体は人形のように空洞になっており、ダメージを受けた様子も見られない。
(おかしい。ネームレスでもダメージが皆無なんて絶対にありえないはず……それなら……あのマネキンの部分は『本体』ではないってことかしら……)
そこで、あさひはとあるひらめきにハッとする。
「浅黄さん!ダメージがないということは、そこは本体じゃないわ!きっとネームレスが大事そうに抱えているあの人形が本体だわ!」
「……!なるほど!了解だよっ!」
欠損した腕の間をかいくぐり、あさひは氷の刃を人形に投擲する。ぶちゅっという音ともに悪臭のする粘液が周囲に撒き散らされる。ネームレスが苦痛に暴れるが消滅はしない。まだダメージが足りないのだ。
「うりゃあーーーっ!」
そこにうららが釘を打ち込むように両手の剣で氷を更に深く叩き込む。そこで初めてネームレスは断末魔をあげそのまま塵に還っていった。
×××××
元の世界に戻ってきた5人とリトルリトルは重い沈黙に包まれていた。沈黙を破ったのは、顔を白くさせあいらに支えられていたきらりだった。
「魔法が……使えなくなってた……」
その言葉に4人は驚きから目を見開く。
「魔法が使えなくなって気付いた。私たち、もしかしたら勘違いをしていたのかも……多分ネームレスが強くなったんじゃなくて……」
「あたしたちが弱くなってた……ってこと?」
流石のほのかもいつもの笑みを消し、声がかすかに震えていた。しかし、そんな5人の様子に首を傾げてリトルリトルらあっけらかんと答えた。
「何だオマエら、そんな勘違いをしてたの?」
「だって!アイたち、どうして弱くなってんの!?」
「魔力を使いすぎているということかしら」
「何故って、そんなの簡単だ。オマエらの魔力の源は何なんだい?」
「何って……負の感情……あっ」
自分の答えた内容にあさひは息を飲む。
「そう、負の感情が少なくなれば魔力も弱まるんだ。オマエら勝手に人生に希望を抱いて貰ったら困るよ」
あまりにも自分勝手な言葉だ。けれど、今のあさひにはそれに文句を言う余裕もなかった。そんなことよりも確認をしなければならないことがある。
「私達は魔力が無くなったらどうなってしまうの?」
「そんなの死体に戻るだけさ」
「……え?」
「オマエらは1度死んでるんだ。それを魔力で生き返らせている。魔力が無くなれば死んだ状態に戻るに決まってるじゃないか」
「そ、そんな」
その答えにほのかが悲鳴をあげた。その両目からは大粒の涙が零れている。久々に見たほのかの涙だ。
「嘘、嘘っ……そ、そんなの、信じたくない、だってそれならわたしたち……」
ずっと苦しみながら生きていかないといけないんじゃないですか!震える声でほのかが叫ぶ。
苦しむためだけに生きながらえ、希望を抱けば死に至る死体。それが魔法少女なのだ。
「そうだよ。ちゃんと理解できたみたいで良かった。あれ?全員にまた負の感情が戻ってきたみたいだね。これで魔力の件も解決だ」
良かった良かった。目の前の生き物が歪な笑みの形でそう告げるのをあさひは呆然と眺める。
あぁ、これが──。
(ああ……これが、これが本当の絶望ってことなのね)
××××××××××××
❤️桃園きらり(cv.瑠莉)
💛浅黄うらら(cv.うにの子)
💚翠川ほのか(cv.蓬)
💙藍原あさひ(cv.唄見つきの)
💜紫京あいら(cv.ここあ)
💔=全員
💚片道分の蝋を持って
💛消さないように必死になって
💜わずか照らした一寸先の
💙穴ぼこは誰が落ちた跡?
❤️それが人生です ボクら手にした人生なんです
❤️Ah 生まれたこと自体が
💔間違いだったの?
💔死にたい 消えたい以上ない
こんな命に期待はしないさ
💛💜故に夢に魘され
塞いだ過去に咲いた世界
💔癒えない 見えない傷ほど
きっと瘡蓋だって出来やしないと
💙💚ボクは知っていた
Ah 悔やむと書いてミライ
💔悔やむと書いて ミライ
❤️消えたいの 💛消えたいの
💙何回だって言い聞かせた
💜夢も見れぬような 💚後悔を頂戴
××××××××××××
♡伴奏♡まふまふ様
公式より引用
https://piapro.jp/uni_mafumafu
♡タグ♡
#桃園きらり #浅黄うらら #翠川ほのか #藍原あさひ #紫京あいら #ネガマジガールズ
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