ミルククラウン・オン・ソーネチカ
💚翠川ほのか(cv.蓬)
ミルククラウン・オン・ソーネチカ
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幕間の鎮魂歌「恐怖の少女」
その少女は明日が来るのが怖かった。
だからこの世界にさよならを告げた。
×××××
「翠川さん、これ教員室に届けといて」
学校から帰ろうと机の中身を片付けていると、隣の席の佐藤さんに声をかけられた。同時に机の上にドサドサと積まれた提出物は、数学の先生に彼女が頼まれていたものだ。
「で、でも、こ、これ、さ、さ、佐藤さんが……」
「私、サササトウさんじゃねーし」
「ウケんだけどぉ」
「はっきり言ってくれないと聞こえませーん」
いつものように吃ってしまうほのかをクラスメイトたちは嘲笑う。それが怖くてほのかはいつもクラスメイトの前では喋れなくなってしまう。
「じゃあこれよろしく。先生に余計なことチクったらこの前みたいにノートが無くなるかもね。あ、もしかしたらノートだけじゃないかも?貧乏なボシカテーだとノート買ってもらうのも大変なのにね~」
そう耳元で囁かれて、思わずすすり泣くほのかをクラスメイトたちは鼻で笑って教室を出ていった。
悪夢だ。けれどこの悪夢がほのかの日常だった。
ほのかは幼い頃から引っ込み思案な性格だった。ほのかが5歳の時に父親が他の女性と家を出ていき母親と2人きりになってからは、いつも暗い顔をしている母に引きずられるように塞ぎ込みがちになった。
そのせいか、学校でうまくクラスに溶け込めない。さらに、人前だと緊張してしまい他人と話す時は吃りがちになってしまう。そして気付いた時にはもうほのかはクラスで孤立する存在になっていた。
「ただいま……」
「あぁ、おかえり。お母さんこれから夜のパートだからお夕飯は自分で作ってね」
家に帰ると母親がばたばたと身支度をしていた。ほのかの方を振り返りもせず髪をまとめている。
「学校から何か連絡のプリントがあれば机の上に置いといて。ノートとか文房具買うお金はこの前あげたから大丈夫よね?最近ノートも安くないんだから、大事に使ってね」
ノートと言う言葉に心臓がどきりと跳ねる。
これまで母親に心配をかけるのが嫌でいじめについて話したことはなかった。けれどもう我慢するのは限界に近かった。だから、ほのかはそれとなく母親に相談しようと、その時そう思ったのだ。
「あ、あのね、お母さん、ノートは……実は無くしたんじゃなかったの……」
「え?」
「クラスの子に、隠されちゃって……」
震える声でそう告げた。母親は驚いた表情でやっとほのかの方を振り向いた。
(これでお母さんが助けてくれる……)
けれどその言葉に返されたのは大きなため息だった。
「はぁ……どうしていつもあなたってそうなの?どうしてクラスの子と仲良くできないの?」
「……え」
「お母さんはね、あなたのために朝も晩も忙しく働いてるっていうのに!どうして問題を起こさずにまともに学校で過ごすこともできないの?お母さんをこれ以上困らせないで」
頭が真っ白になった。それからの母親の言葉はもう覚えていない。いや、それ以降は何も言っていなかったのかもしれない。
気付いた時には家を飛び出して、夜空の下を躓きながらめちゃくちゃに走っていた。
「もう嫌だよぉ……学校に行きたくない、家にもいたくない……生きて、いたくない……」
ほのかは怖くて泣きじゃくった。また明日が来る。明日になったら学校に行かなきゃ行けない。あの悪夢が繰り返される。けれど誰も助けてくれない。
「え?あ、あ……なんで……」
それでも気付いた時には学校の前にいた。だってほのかの日常は学校と家の往復ばかり。お金も友達もいないほのかにはそこしか行く場所がない。
「もう、嫌だよぉ……」
だから、ほのかは非常階段をそのまま上がって上がって上がって上がって逃げるように屋上へ走った。手すりから身を乗り出せば、ふわりと体が浮く感覚。
その時、確かにほのかはこれで学校にもう行かなくて良いんだと安堵したのだった。
×××××
『今日いつものところで集合です』
『今日集まるんだっけ?忘れてた……ありがとう!』
『その為に連絡したから気にしないで下さい』
スマホに表示されるそんなやり取りを見てほのかは微笑む。そこにさらにきらりから「提出するものがあるから先に行ってて~!ごめんね!」と連絡が入る。
ずっと憧れていた友達とのやり取り。自然と表情が緩んでしまうのも仕方ない。
「翠川さ……」
「さよならっ!」
佐藤さんが話しかけて来ようとしたが、ほのかはそのまま鞄を掴んで教室を飛び出した。クラスメイトたちはほのかの行動に驚いたようにぽかんとしている。
明日何か言われるだろうか?
でももう良いのだ。今のほのかには不思議な魔法少女の力と仲間がいるのだから。その事実はほのかに今までに無いほどの充足感と自信を与えていた。
(もう、私は明日を怖がらなくて良いんだ……)
ほのかは足取り軽く学校を後にしたのだった。
××××××××××××
💚翠川ほのか(cv.蓬)
だって笑われてるから笑ってみたけど
怒らせちゃうのなんで?
いつも妄想するほどうまくいかなくて
「ごめんなさい」ってなんで?
ママに見せられないような
くしゃくしゃ頭に許してくださいって
踏んだ方もそれなり心が痛いとか言ってたの、
嘘ですか
出来ないそんな才能は無い
出来ないそんな才能も無い
出来ないそんな才能なんて
どこのお店でも売ってくれないし
天にまします神さまだって
こんなガラクタ御手汚しですか
わたしだけが知ってる
刹那に生まれた小っちゃな戴冠式
ねぇ凛とすましてるお姫様にでも
取って代わらせてソーニャソーニャ
だって嘘ばかりtiny tiny世界に罪とか
放り出したってそれを恨んだって
咎めなんかして損に得に?
愛を説いて満足気な教科書の慣用句
禁じてください間違いでしたって
××××××××××××
♡伴奏♡ゆきの様
https://nana-music.com/sounds/05e83a37
♡タグ♡
#ユジー #DTM伴奏 #ゆきの伴奏
#翠川ほのか #ネガマジガールズ
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