何度もみた未来が押し潰す
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自分じゃない誰かのために。
その言葉は聞いたことのない言葉だったし、信じることもできない言葉だった。周りの人はみんな自分のためにしか動いてないし、仮に誰かのためだったとしても、いつも見返りを期待しているものだろうと思っていたから。
今まで他の人のことを気に留めたことがそこまでなかったから気付かなかったけれど、一番年上であろう彼女──美葉は、いつも他の子どもたちのために忙しそうに動いていた。それなのに疲れたような様子は全く見せず、みんなに優しく接していた彼女のことを、私はよくわからずにいた。人のために何かをすることに意味なんてないし、ただ疲れるだけなのに。どうしてそんなめんどくさいことをわざわざするのだろう。
そう思っていた、ある日。
前に出ようとして止められた扉の近くを通りかかった時に、その光景が目に入ってしまった。扉は少し開かれていて、美葉がその扉の前に、そして美葉よりももっと背の高い人たちが扉の向こう側に立っていた。美葉よりの背の高い人は、ここにはいない。ということは、その場所に立っているのはみんな、大人たちだ。
大人の姿は思ったよりも不気味だった。身体のほとんどが黒い服や布に包まれていて、顔もよく見えない。みんながみんな同じ姿をしているようだった。両親以外には遠くからしか大人の姿を見たことはなかったから、びっくりした。大人たちと話す彼女は普段と同じ柔らかな話し方をしていたが、その顔はいつもと違って少しだけ苦い表情をしている気がした。
最初に会った時、美葉は大人のようだと思った。それは、昔の両親に似ていたからだと思う。だから嫌いだと思った。
昔と比べて大人たちが変わったのか、それともずっと優しい両親のことしか見えていなかったのか。どちらかはわからなかったけれど、大人は私が思っていたものとはずっと違っていて、私がまだ知らないことももっと多いのかもしれない。
大人に近いようで遠い彼女は、何を思っていて、どんな世界を見ているのだろうか。
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風茜がここに来てから、私の生活は以前のように明るいものへとなっていった。いつも笑顔でいる彼女を見ると、なんだか昔の頃に戻ったみたいで、嬉しかった。
でも一つだけ、変わったことがあった。
あの日、風茜は一人でここに来た。でも彼女は一人ではなかったはずだった。彼女の隣にはいつだって、大好きで、一番大切にしていた妹がいたはずだった。けれど妹の姿はそこにはなかった。どこにいるのか、何をしているのかは全くわからなかったけれど、そのうち風茜の方から話してくれるだろうと思っていた。でも彼女はその存在すらまるで忘れてしまったかのように、妹のことを頑なに口にしなかった。
あまりにも妹のことに触れようとしない彼女がだんだん心配になってきて、そのことをおそるおそる尋ねてみた。
「あー、んーとね、ちょっと今離れてるだけだから、そゆちゃんが気にしなくても大丈夫!」
彼女はそう言って、いつもの屈託のない笑顔で笑った。
確かにどんな時でも、時には無理してでも笑顔でいるような子だった。けれど、それでも、自分以上に大切に思っていたはずの妹の話をなんでもない笑顔で流す姿は信じがたくて、怖いと思ってしまった。知らないうちに彼女の中で何かが変わってしまったのだろうか。
「ねぇ、やっぱり大丈夫じゃないと思う」
それとも、あの頃から何も変えたくないのだとしたら。
「どうしてそんなに不安そうな顔するの?ふーちゃん、そゆちゃんにずっと笑っててほしいのになぁ」
そう言って私を心配する時も顔は笑ってたから、もう目を合わせたくなくなってしまって、顔を背けた。それ以上踏み込む勇気は、私にはなかった。
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lyrics
☀️「僅かでも違えば」
❄️「選べたなら」
🍀🥀「それか、一秒早く歩けたら」
🥀❄️もしもの世界はナンセンス
だけどいくつも生み出される
🍀☀️姿見の向こうが
せめて想像通りであればいい なんて
❄️自分を重ね続け
どうにか高い景色見てた
🥀不安定な足場
🍀崩れてしまうのは時間の問題
☀️分かっているけれど
今は
‧✧̣̥̇‧壊さないで私を
何度もみた未来が押し潰す
もがく程 深く昏い水底
ひとすじの希望さえ届かない
永遠のアウトサイダー
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Cast
🥀蘭花 -Ranka- cv.桃ノ助
❄️疏雪 -Soyuki- cv.碧海
☀️風茜 -Fua- cv.ハナムラ
🍀美葉 -Miyo- cv.にな。
Instrument
→ https://nana-music.com/sounds/05d97fb4
#やなぎなぎ #アウトサイダー
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Another version
→ https://nana-music.com/sounds/0697851f
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