花を唄う
シノ feat.初音ミク / テラリウム𓈒𓂂𓏸
花を唄う
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𓏸𓂂𓈒𓂃さよならその一言が言えず ♔𓂃𓈒❁𓈒𓈒𓂂𓏸
真っ白なカーテン越しに見る海は、
いつだってキラキラしていた。
幼い頃のツバキは生まれつき身体が弱く、入退院を繰り返す日々を過ごした。
少しでも空気がいいところへと祖母が住んでいた海が見える田舎町に越してきたのも幼い頃のことだ。
丘の上にある病院は海までの道にたくさんの桜の木が植えられていたため、春になると病室から満開の桜が見放題で、すごくキレイだった。
そんな懐かしい景色に今日は私かとすぐに理解した。何か思い残したことがこの当時あっただろうかと思考する。
「……ほんの一時だけ、桜と同じ名前のサクラという少女と仲が良かったな。」
𓂃 𓈒𓏸𑁍𑁍𓏸𓈒 𓂃
日曜日の朝、8:30から始まる女児向けアニメが好きで、
病室を抜け出してこっそりアニメの歌を歌うのがツバキの密かな楽しみで。
朝食を終えて、みんなでアニメを見たあとに誰かにバレちゃわないかってドキドキしながら屋上まで行って、いつもは出さない大きな声で歌っていた。
その日もこっそり抜け出して歌ってたらギィと錆びた屋上の扉が開く音がして、びっくりして振り向いたとき、ツバキを見つめてたサクラは目をキラキラさせていた。
びっくりして言葉を失ったツバキをほうってサクラは一人で盛り上がっていた。
「今のうた、『魔女っこ☆ルル』のだよね…?!すっごく上手!もっと歌って!」
「サクラもね!『ルル』のうたすきだけど、うたうと咳が出ちゃうからうたえないの!」
そう悲しむわけでもなく単にツバキに歌ってほしい理由を伝えるサクラがおかしくって、お願いされるまま歌を歌ったの。
それからほんの一週間、毎日屋上でサクラのためだけに歌を歌ってた。
「また明日もサクラのために歌うね!」
そうやって病室に戻るのが二人のルールだった。
𓂃 𓈒𓏸𑁍𑁍𓏸𓈒 𓂃
まだ冷たい春風が吹く屋上で毎日長時間過ごしているのは、身体の弱いツバキには厳しいものだった。日曜日なのに。楽しみにしていたアニメの日なのに。
サクラと約束していたのに、ツバキは体調を崩してしまった。
病室から出ることを許されたときには満開だった桜はもう葉桜になっていた。
仲良しの看護師さんにサクラに会いたいと伝えると困った顔で
「サクラちゃん、元気になって退院したの。」
「お手紙もらってるから持ってくるね」
優しい口調でツバキに視線を合わせて話してくれたのをよく覚えている。
あのお手紙、どこにやったかな。
せっかくサクラが書いてくれたのに天邪鬼になっちゃって、読めなかったんだ。
確かに後悔してるかも。
お別れもいえなくて、お手紙も読めなくて。
それでかなぁって冷静な自分がいて、ちょっとだけかなしい。大人になったのかなって思うの、なんか恥ずかしい。
「ツバキ〜!一番乗りだったの?」
明るいトーンの優しい声が聞こえて振り返ると、ニコッと笑ったアザレアとぺこりと頭を下げるエリカ、ぽ〜とした表情で辺りを見渡すアベリアがいた。
しばらく談笑してるとナズナ、ユズ。アスター、スミレとみんなも集まってきた。
最後にルピナスがきて気まづそうにどこかへ行ってしまった。
いつもなら空間の思い出の主が満足すれば帰れるのだが、ツバキはもうサクラとのことは割り切っていた。入院生活ではよくあることだし、仕方ないのだ。
いくら現実世界の時間が影響しないとはいえ、空間が戻らないのは困ったなぁとは思う。どうしたものか。
ふと、こちらの様子を伺うようにしているルピナスと視線があった。
珍しいこともあるんだなーと思いながら、たどたどしい歩みでこちらへ向かってくるルピナスを「私は見てませんよ」のていで気づかれないように見守った。
「あ、あの…!これツバキ…さんの…」
近くに来ても悩んだ様子でいたルピナスは思ったよりもずっと大きな声で一枚の封筒をツバキへ差し出した。
子供が書いたようなまぁるい字で『ツバキちゃんへ』と書かれたそれに、見覚えがあった。
サクラからもらった手紙。
手紙を見て固まったツバキをみて慌てるルピナスとそれをみてツバキと話していたアベリアとナズナは状況が読み込めず、頭上にアニメでよく見るようなはてなが浮かんでいるようだった。
「ありがとう…これ、だいじなものなの。
無くしてた、大事な人からもらったものなの」
やっと絞り出した言葉はそんなありふれた感動シーンのセリフみたいなもので。
それでもほっと息をつくルピナスは嬉しそうで、無くしたはずのサクラからの手紙が手の中にあって、私も嬉しくて。
みんな状況はよく分かってなかったはずなのにアベリアの「よかったね」って言葉を合図に、優しい言葉をくれたり、見守ってくれてたりで暖かかった。
今年ももう葉桜になってしまったけど、
来年はお花見…行ってみようかな。
〖花を唄う〗
🧊何か見つめる君 近くて遠い
💄伸びた爪 冷めた手で 握る手が痛い
☕️それでも私は あの花のような笑顔で
💄君と笑うの
💄☕️偉いでしょ?
🌷桜の花舞う季節
🧊「さよなら」その一言が言えず
🫐きっと心の中から消えず
🍀私 ずっと 一人なの?
🍹目の前に咲いた花
この世の何よりも 色付いて
🫧手を伸ばしても 触れないから
🎨夢見の花を一人 握ってた
(全員)揺蕩う唄 唄う 花の唄
口遊んで 歩く
🌷🍀何か掴んでたはずの手が
空に溶けていた 花を掴んだ
🧊🫐光差す君の横顔は
とても綺麗で
🧊思わず息を飲み込んで ただ戸惑う
☕️💄🫐🍀ねぇ、待って? 届かないなら
🫧🎨🌷🍹私はただ君の幸せを願おう
🧊これでいいって自分に言い聞かせるの
物憂げに 見つめた 君に唄う
(全員)天邪鬼な 希う唄
𝑚𝑒𝑚𝑏𝑒𝑟𓂃◌𓈒𓏲𓆸
No.1 アザレア💄
CV. IRYU
No.2 アスター🌷
CV. あじのもと
No.3 アベリア🫧
CV. 蓬
No.4 エリカ🎨
CV. 木綿とーふ
No.5 スミレ🫐
CV. はいねこ
No.6 ツバキ🧊
CV. 唄見つきの
No.7 ナズナ☕️
CV. 瑠莉
No.8 ユズ🍹
CV. 07
No.9 ルピナス🍀
CV. 春野
🏷𓂃𓈒𓏸︎︎︎︎
#花を唄う
#シノ
#terrarium_Sct
𓂃 𓈒𓏸𑁍素敵な伴奏ありがとうございました𑁍𓏸𓈒 𓂃
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