_________自分を見ていた_________
今日までの記憶の全部を
消してしまう時まで眠れない
あしたから生きていく
自分の身代わりが欲しくて堪らない
大丈夫と言わせて
後から君のせいにさせてはくれないか
今更意味ないから
後から君のせいにさせてはくれないか
出来ない約束を
とうとうと溢れる一言一言ばかりに
脳を奪われるくらい
意味を成せない 何も出来ない
見えない 逃げたい 飛びたい やめたい
逸らせない
だから
沈め
這い上がれないほどまで
飽きるまで
落とせ
救い垂らす時まで
__________ 📚 × 🗡 __________
自分を救い出してくれたと同時に地獄の底へと引きずり込んだこの組織を、嫌いだとか嫌だとか思ったことは1度たりともなかった。
訓練は厳しかったけどついていけなかったことはないし、出来ることを当然のようにやってきた結果が当然のように付きまとってきているだけ。
人々はそれを、俺を、天才と呼んだ。
「兎月、」
自分の机に細かなパーツを広げてカスタマイズをしていた友人に声を掛けると、彼は手元から目を離すことなく何?と問うた。
彼は奇才だと誰かが言った。銃器であれば片っ端から扱えるようになりたいと言い、ハンドガンからスナイパーライフル、ロケット弾を放つロケットランチャー等、その使い方から構造まで"自分の興味"で調べあげて自分のものにしてしまうのだ。
彼の才能は銃器に留まらず、日本古来の長刀を軽々と振り回し使いこなす。他のことはからっきしではあるが、この部隊に居るならばこの上ないものだ。
「辛くないか」
ぴく、と指先の動きが止まる。1秒、2秒と彼の口が空気だけを吐き出して動き、まるで諦めたように静かに手に持っていたものを机の上に置いた。
交差する夜闇色の瞳は鋭く、真っ直ぐだ。
「なんで」
「…そのなんでは、何故そんなことを聞くのかって意味か?それとも、"なぜ分かった"の方か?」
「答え、変わるわけ?」
「…………」
否定はしないんだな。声に出さずとも目を細めると、兎月は長いまつ毛を下ろした。
「分かるよ。どんだけ一緒なんだ」
「……カクタスは、訓練とか楽しい?」
「お前は楽しくないわけ?」
「……楽しいけど、不安なんだよ」
「不安?」
小さく呟かれた言葉に、カクタスが聞き返す。すると兎月は手元にあった銃器のパーツを眺める。
「訓練は嫌いじゃない。けど、生物の命を奪うと思うと少し怖い。…俺は、みんなが期待するほど度胸は無いし」
「…………」
カクタスは黙り込む。兎月に視線を向けると、彼は顔を上げてこちらを見た。そして困ったような笑みを浮かべて言うのだ。
「こんなんじゃ誰一人助けられない。
…いや、心配は要らねえよ?逃げたいと思うことはあってもそんなことできっこないし、」
「大丈夫」
思わず遮るように言ってしまった。しかし後悔はない。だって、そんなことは俺が一番よく知っているから。
兎月は驚いたように目を見開いていたが、やがてゆっくりと瞬いた。
「大丈夫だよ。お前ならできる」
「……無責任すぎね?」
「そうかもな」
でも、と笑ってやる。
「まだお前はできるよ」
それを聞いた兎月は少し間を置いて、ふっと肩の力を抜いて呆れたように息をつく。
手元のパーツたちにまた1度目線を落とし、カクタスを見た。
「俺と同じくらいの所まで落ちてきたらいいよ」
「まだそこまで人間捨てたくないんだけど」
「はあ?」
「流石に人を殺すのに躊躇ないお前と同等にはなりたくないな〜!」
まだ18歳だと言うのに既に地の底に居るカクタスから差し伸べられた手を、兎月はまだ取れない。
ズブズブとゆっくり沈むその姿を地底から見上げるカクタスは、笑いながら待つだけだ。
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