Blue in Green
kiki vivi lily, SUKISHA
Blue in Green
- 24
- 4
- 0
S-301の報告
私はユカリくんの片思い相手だった。想われていることを知りながら、その気持ちには答えずに思わせぶりな態度で手のひらの上でユカリくんを転がすことが仕事だった。ユカリくんは植物に詳しく、水耕栽培の工場で人類の健康のために尽力していた。本人の生活態度は悪くて、栄養状態が悪くなる度に私は『ユカリくん、最近ちゃんと食べてないね。……私、ユカリくんが倒れちゃったら嫌だよ』や、『私がユカリくんを大切に思うくらい、ユカリくんも自分のこと大切にしてよ』と彼を鼓舞した。眠る日が決まってからは、彼の生活が荒れることもなかったが、会話の頻度が増えた。ユカリくんが望む言葉を算出し、返答する。彼は満足げだったが、時折表情が曇っていた。虚しさの類の表情だった。
「君には悪いことをした。それでも、僕は君が好きだった」
『私のことを好きになってくれてありがとう。おやすみなさい、ユカリくん』
これが私たちの最後の会話だ。
個体番号260042、入眠確認。
#さめるまできみと
Comment
No Comments Yet.