愛の過剰摂取、果ての執着と支配欲
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Azel's side
『 透華… …先輩。 』
人は、不意な瞬間に珍かなことを思考する。
放課。部活動を終え、楽器ケースを背負って彼女との待ち合わせている教室へ足早に戻る褐色肌の彼女は目元の包帯を指先で弄りながらふと考える。
うちら二人、関係も長い、そろそろ彼女の名前を呼び捨てで呼んでみても許されるだろうかと。
純情な思惑を胸にした矢先、教室に入ると目前の彼女が絵画に見えた。佇む薄桃色の髪と白い横顔が夕日に照らされ輪郭の凹凸や陰影が浮き出ている。翡翠の瞳に乱反射する橙色が蝋燭に灯った火のように瞬きをする度揺らめく。叙情的とも言える風景に目を奪われ、息を飲んだ次にはいつもの敬称があとを出てきた。が、普段のような返事は無かった。思惑が筒抜けなら小恥ずかしいのだが。
『 …先輩…? …透華先輩? 』
「 …アゼ。 」
数回呼び直すと、絵の中の彼女は動き出し、手元の手記から目線を起こす。額縁の向こうにあるような彼女は漸く私の存在に気がついたらしく、拍子抜けしたようにうちの名前を無機質に呟いた。何を期待していたのか定かでは無いが、何かが胸の辺りに澱んで溜まるのを感じた。
『 何か考え事でもしてたんすか? 』
「 ………多分。 」
また、日記だ。肌身離さず持ち歩くその小さな日記を感慨深そうに読み返す彼女をこれ迄も幾度も目にしている。悲哀の表情でその日記に没頭して、聞く耳を持たなくなる。多分、なんて言ってはぐらかしてる彼女を抱き締めたくなった。
( また…うちじゃない人の事、考えてる。 クソ…… )
『 …そう、っすか。 』
嫉妬など醜悪な感情だ。恋人と言えど、誰しも他人に知られたくない事の一つや二つあるだろう。それは決してうちも例外では無いことをきっと彼女も察している。
正直なことを言えば、彼女の全てを知りたい。すべて、教えて欲しい。うちの知らない先輩がいて欲しくない。根掘り葉掘り詮索して、それで。
( うちの事だけ見ていてほしい…なんて言えたもんじゃねえな )
『 もうじき日が暮れてきますし、そろそろ帰りやしょう。 』
ポケットの中でギチギチと爪を食い込ませて握っていた拳をふわりと緩め、一度深呼吸をしたあと浅い呼吸を繰り返す。小さく返事をして机上の荷物を片す彼女の後ろ姿をぼんやりと眺める。今は彼女と一緒にいられるだけで幸せだ。それでいい。この関係が出来るだけ長続きすることを願う。細かく点滅を繰り返す替え時の蛍光灯が鬱陶しいので消灯すると、光源は夕日のみになり、鮮やかな赤と影の黒色の非日常な色合いに包み込まれた。時間も遅い、あの夕日はじきに沈むだろう。そうすれば、この教室は完全な暗闇となる。
「 ねぇ、アゼ。 」
『 ……? どうしました? 』
手を止めてこちらを振り向いた彼女は、また額縁の向こうにいるように見えた。だが二人の間に壁など無い。
「 ……ありがとう。あの時、とーかと出会ってくれて。 」
曇りない晴れやかな彼女のその表情と言葉が、アゼルの胸を高鳴らせた。衝動から、その額縁の中に手を伸ばす。微風がカーテンを靡かせ、するりとその絵の中に入ったような気分がした。嗚呼、早く日が落ちないか。視界を彼女で満たしたい。彼女が自分以外考えられなくしてやりたい。様々な歪んだ欲求が駆け巡って心を支配してどうにもならない。赤らんだ顔も見られたくない。
『 うちも、先輩に……透華に、お礼がしたい 』
頬に指先を這わせて、感謝と親愛を伝えようとしたが行き過ぎた欲望を抑制するのに充分な理性を持ち合わせていなかった。
『 ホント、ありがとうございます 』
『後戻り出来ないぐらい先輩のこと好きにさせてくれて。』
執着と独占、そして支配を顕にするべく、飢えた鬣犬の如く彼女の喉笛に牙を立てた。
( うちだけのものになってよ。先輩。 )
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🦈╎本当はわかっていた
いけないことだったって、分かっていたのに
🍬🦈╎この手をすり抜ける全部が愛に見えたの
🍬🦈╎確かめていた言葉が
🍬╎形になって、揺れるだけ
🦈╎弾いて、描いて きっと、それだけ
つまらないな、正解の読み合わせ
🦈╎あとちょっとで
🍬🦈╎分かりかけていたのに
🍬╎飲んで、吐いて 全部忘れちゃえ
水をまとった本心と鏡合わせ
🍬╎見つめ、会えたら
🍬🦈╎Overdose 君とふたり
やるせない日々
解像度の悪い夢を見たい
Overdose 君とふたり
甘いハッタリ
Don't stop it music,darling
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原曲
https://youtu.be/H08YWE4CIFQ
甘草 透華 Toka Amagusa 🍬 3008
https://nana-music.com/sounds/0656e186
アゼル・ベガ Azel Vega 🦈 2007
https://nana-music.com/sounds/0652379d
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🍬活動録🦈
ヒカレ
https://nana-music.com/sounds/065dfbe1
ルーマー (Toka's side)
https://nana-music.com/sounds/066ea366
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tags
#なとり #overdose
#リーリエ学園
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