Mad Hatter
DUSTCELL
Mad Hatter
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#勿怪面妖奇譚
话中有话09/Mad Hatter
走った。それはもう、全力で。煌びやかな街の景色が歪んで、周りの声が全て責め立てるように突き刺さった。
走り抜ける朝緋達を避けるもの、心配するもの、肩が当たって怒号を浴びせるもの。
全てもう、三人には届きはしなかった。
「──吟」
「ハい」
御影は懐から数枚の札を取り出し、荒々しく投げる。それらの札は煙と共に姿を変え、あの四足歩行の獣となった。
「それ、まだ飼っておられるんですね。あの鳥といい、相変わらず悪趣味でいらっしゃる」
「黙れ。……吟、人間を探せ」
吟と呼ばれた獣は駆け出し、散り散りになる。ジャラジャラと鳴る鈴の音が少しずつ遠ざかっていく。
「それでは、私も仕事にしましょう。今回の仕事による報酬は後程、改めてゆっくりと」
化面屋はクツクツと笑いながら、大通りの人混みに消えた。
知らない獣。包帯に描かれた目がぎょろぎょろと周囲を見渡して、また一匹走り去る。
大通りから外れると、街行く妖の数は随分少なくなった。そこから更に外れた小道で、三人は息を殺していた。
「なに、あの生き物……」
「多分、俺達を探してる。でも鼻は良くないみたいだ」
「見つからなければ、大丈夫だよ、ね?」
「……多分な」
麻昼はもうすっかり涙声になって、カチカチ鳴りそうな歯をなんとか堪えるも、体の震えは一層激しさを増していた。
あの時面を買わなければ。あの時化面屋を呼び出さなければ。
あの時、あの時──。
「──おや、皆々様。こんなところで、一体何を?」
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ㅤ ㅤ Voice actor
化面屋🎭🦐
御影🚬あじのもと
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