【大きな背中は何を残して】
⑩渉・零・なずな
【大きな背中は何を残して】
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モラトリアムの終わりを告げる黒い筒を手に、もう多くの生徒は最後の下校を果たしていた。
すっかり傾ききった陽のなかで、廊下の隅に佇むひとり。
その姿を見れば、もうひとりは察したように足を止める。
特段、待ち合わせなどしているわけではなかったが、もはや2人の間に言葉は不要だった。
奇術師と魔物は、それだけの絆で結ばれていた。
そして、その不思議な絆の音が、大きな耳には聴こえたのだろう。
小さな体はくるりとこちらに翻り、"かつて、自分に掛けがえのない未来をくれた"その偉大な友人のことを、ぼうっと眺めていた。
いつかはずっと遠くに見えていたその友人たちは、どこか雲の上の存在のようで。
手を伸ばしても飛び跳ねても届きそうになかった彼らの姿は、まだ寒い春の風の中で少しだけ、近くにいるように感じた。
渉「最後のご挨拶にと、お待ちしておりましたよ、零」
1:30-1:24
零「待たせたのう、渉くん。
して、そこのなずなくんも招待客かえ?」
1:24-1:18
渉「おや、彼はどうやら迷い込んでしまったようです。
うさぎさん、ワンダーランドはこの先ではありませんよ」
1:18-1:08
なずな「うにゃっ、屈んで目線を合わせるな!
おまえら、ただでさえ身長も存在も大きくて、自分が小さく感じるんだからな!」
1:07-0:57
渉「我々からすればあなたのほうが、よっぽど偉大な同級生ですよ。
後輩を育み、自身も輝きながら、勉学にまで勤しんでしまうのですから」
0:56-0:43
なずな「そんなふうに思ってもらえてたなら光栄だな。
に~ちゃんとしては、あいつらを残していくのが心配だけど」
0:43-0:33
零「これだけ大きな背中を見て育てられたんじゃ。
心配は不要じゃろうて。
ともすれば我らよりも聡く、大切なことを知っておるじゃろう。
即ち、共に輝くアイドルとして、羽の形も、毛の色も、関係ないということをのう。
さあ、愛おしき同胞たちよ。
今はともに、暫しの追想に更けようぞ」
0:33-
※呼び方のみ変更させていただきました。
朔間零→日々樹渉 = 日々樹くん
朔間零→仁兎なずな = 仁兎くん
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